ボストン大学の社会学者デボラ・カー(Deborah Carr)は、退職後の生活の安定に関しては、すべてが平等だというわけではないことを発見した。有利な状況がずっと続く人がいる一方で、状況が悪化していく人もいる。
カーは、その著書『Golden Years? Social Inequality in Later Life.』(豊かな老後? 高齢期における社会的不公正)のなかで、「すべての高齢者が優雅な暮らしぶりを手に入れられるわけではない」と述べている。「社会階層の下のほうにいる人たちにとっての老後は、日々の労苦と健康問題、経済的な困窮に満ちている」
退職後に最も大きな幸せを手に入れられるのはどんな人たちなのか。キム・ブラントン(Kim Blanton)はブログ「Squared Away」で、同書の内容を次のようにまとめている。
学位を取得しておくと大幅に有利になる
「大学で学位を取得すると、若いうちに、より高い収入を得られる方向へと向かうことができる。それがいずれは、退職後の快適な生活につながっていく。雇用主が提供する手厚い医療保険と医学の発達のおかげで、大学で教育を受けたアメリカ人が高齢になってから身体に障がいを負ったり病気にかかったりする割合は急激に減っている」
高校を中退しない
「一方、高校を中退した退職者は、早死にする危険性がある。それは、複合的な原因が一生を通じて悪化していくためだ。低賃金の仕事についていた、健康保険に加入していなかった、あるいは、保険があっても最低限の医療費しかカバーされなかったという理由で、病気になっても治療を受けずに済ませざるを得なかった場合もあり、退職前にすでに健康が蝕まれている可能性がある」
既婚者のほうがいい
「学位の取得と同様に、結婚も、老後の経済的な安定に関係している。夫婦で共に老後資金を蓄えられるからだ。それぞれが退職したあとは、結婚から得られる経済的かつ精神的なサポートの重要性はよりいっそう増してくる」
収入が多い人のほうが、より健康的な生活を送る
「低所得者のほうが、喫煙や飲酒をすることが多い。また、老朽化した危険な家や、汚染のひどい地域に住むことも多い。カーは本書で、早死にしたアメリカ人の60%が、そうした社会的な要因がもとで死亡していることを示した研究を紹介している」
活動的な生活を維持する
「充実感を与えてくれた仕事を退職したり、配偶者や友人、大切な人を亡くしたりしたことをきっかけにして、社会的な孤立に陥ることがしばしばある。やりがいのあるほかの活動に取り組むためのリソースがないときには、喪失感はさらに深まる。家族メンバーの生活が苦しく、高齢家族の空虚さを埋められない場合にも、喪失感は深まる」
断わっておきたいのは、ここに挙げた要因のどれかひとつでも当てはまっていれば、必ず充実した老後が約束されるわけではない点だ。逆に、独身者であっても、または高収入者でなくとも、快適に暮らすことはできる。大切なのは、ここで挙げた要因のできるだけ多くを兼ね備えることだ。