「新しい働く、学ぶ」を考える5つのKEY(後編)


「Head-Heart-Hand」で学び、実践する精神

大本綾 レア共同代表

変化の激しい時代に、人間は何を学ぶ必要があるでしょうか? 私は2つあると思います。まずは伝統や歴史を振り返ること。そして、新しい未来を創るべく、学び方を学ぶことです。デンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTを卒業後、教育デザインファーム・レアを立ち上げ、デンマークと日本を行き来する生活のなかで、この2つの学びを継続することが、個人とコミュニティ、組織の成長を加速させると確信しました。

大切なのは、「人間中心に学びの環境をデザインする」という考え方。デンマークは1970年代中盤から、デザイン思考の試みがはじまり、学校教育でも正解だけを教えるのではなく、子供たちが自ら問いをたて、プロジェクトを通して納得解を探求できる学びの環境を先生が自らデザインしてきました。それにより、子供たちは自分が何に興味を持ち、課題に感じるのか、主体的に考えます。本当の学びは、自分の思いや意思、価値観を深く内省し、学びの軸を立てることから始まる、という考え方だと私はデンマークで学びました。

一方、日本でもそのような学びが生まれる環境を再現できるかと不安がありました。しかし、2年前から「産総研デザインスクール」の立ち上げに携わり、未来を創る学びの環境は場所を問わずデザインできる、と確信しました。

同校は、千葉・柏の葉に拠点を置いた「未来の暮らしを共創するテックリーダーを育成する」学校です。8カ月間、産総研の研究者や企業の参加者が、KAOSPILOTをはじめ、国内外の先駆的な取り組みを行っている人々から学び、地域の多様な人々を巻き込みながら創りたい未来の実現に向けて活動します。そして、人々の前向きな感情と行動を引き出す接点を自ら見つけ出し、多様なプロジェクトを柏の葉で実践するのです。

このような未来を創る学びの環境をデザインする上で必要なのは、「Head-Heart-Hand」で学び、実践する精神です。つまり、頭を使って場の目的を考え、心を使って人々に共感し、最高の経験を創るために行動するのです。

未来を創る学びの環境は一人でつくる必要はありません。情熱や想いを共有できる仲間たちと共にデザインすることができます。なぜなら、それはこんな未来を創りたいというあなたの心の中に眠る「意思」から始まるからです。

文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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