観戦率はわずか1%── パラスポーツをアップデートする「クリエイティブ」の力

(左から) 浅井雅也、成田緑夢、本多達也



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浅井:世界と日本で、パラスポーツに対する考え方や接し方には違いはありますか?

成田:(世界のパラスポーツの大会は)実際に生で観たことがないからなんとも言えないけれど、個人的には、障がい者と健常者の区別があまりないように感じます。もし義足を履いている人がいたとして、日本では「かわいそう」と思う人が多いところを、海外では「うわーかっこいい、イケてるね!」みたいな。SF映画とかで登場人物の右腕がロボットアームだったりすると「かっこいい」と思うじゃないですか。そんな感じで、障がい=かっこいいみたいな価値観になっていけば、パラスポーツはもっと盛り上がるのかもしれませんね。

人は「できないことに対して全力で挑戦する」ことに感動します。時間をかけて不可能を可能にする努力をする、その背景を知っているから喜び、心が震える。
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障がい者アスリートにとって、パラリンピックの金メダル以上に価値があるメダルは無いんです。だから僕は、2018年平昌パラリンピックで金メダルをとったあとすぐ、パラスノーボードを引退しました。いま僕が、パラリンピックではなくオリンピックを目指したり、走り高跳び競技に挑戦したりしているのも、できないことに挑戦して、人々にポジティブな影響を与えたいと思っているからです。

本多:「かわいそう」の目線ではなくて、パラ卓球がやっているような、障がい=個性があって、クリエイティブなところを伝えていくことが大切ですね。

成田:一回でもいいから、パラスポーツを観に行ってほしいと思っています。行ってみて、その魅力を感じてほしい。パラスポーツの何がすごくて、どう感動するか。感動してほしいといいたいわけではありません。感じ方は人それぞれなので、何も感じなかったらそれでも構いません。けれど実際に観に行ってもし何か感じたら、それを積極的に発信してほしいです。

オリンピックの魅力は「人類最速・最強」と呼ばれる人たちのすごさを目の当たりにできること。一方、パラリンピックの魅力は「感動」。オリンピックとは一味違う衝撃があります。フィールドに立っている選手の腕がなかったり、脚がなかったり、日常にはない光景だからこそ引き込まれ、その選手たちがオリンピックアスリートと同等に努力し、メダルを目指している。その衝撃を、ぜひ生で体験してみてほしいです。


あさい・まさや◎北海道生まれ。高校時代より渡米。2012年から6年間ロサンゼルスにてアップルの広告制作をした後、2017年よりTBWA HAKUHODOでユニクロのグローバルキャンペーンやパラ卓球を担当。カンヌライオンズグランプリやTokyo ADC賞を含む50以上の国内外の賞を受賞。

なりた・ぐりむ◎1994年生まれ、大阪市出身。小学生からスノーボードで国際大会に出場。同時に行っていたトランポリンでは、2010年に全国高校選手権で歴代最高得点をマークし、12年ロンドン五輪代表の最終選考まで残った。13年4月、トランポリンの練習中の事故で、左膝下から足首まで動かない「腓骨神経左膝下まひ」の障害を負った。18年3月の平昌パラリンピックのスノーボードで金、銅のメダルを獲得。

ほんだ・たつや◎1990年生まれ。大学時代に手話通訳のボランティアや手話サークルの立ち上げ、NPOの設立などを経験。「人間の体や感覚の拡張」をテーマに、ろう者と協働で新しい音知覚装置の研究を行う。2014年度『未踏スーパークリエータ』、16年度グッドデザイン賞特別賞を授賞した。Forbes 30 Under 30 Asia 2017選出。2016年より現職。

文=石原龍太郎

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