ただし、中国の都市がさらに順位を上げ、トップランクの欧米の都市と競い合えるようになるためには、より多様で包括的になる必要がある──米経営コンサルティング会社A.T.カーニーは先ごろ発表した「グローバル都市指標(GCI)」調査の結果を含む報告書の中で、そう指摘している。
世界中のどの都市にもあるスターバックスやアップルストアも出店するなど、国際化が進む中で、中国の都市が地元住民のニーズとのバランスを取る重要性は高まっている。だが、GCIで世界のトップ5に入った都市(1位から順にニューヨーク、ロンドン、パリ、東京、香港)に比べると、中国の都市の大半には、そうした面が欠けているという。
それでも、中国の首都である北京は、米国の首都ワシントンの順位を上回った(それぞれ9位と10位)。上海は19位で昨年と同じ順位にとどまったものの、ボストン(21位)、サンフランシスコ(22位)より上位となった。
都市化に見られる変化
A.T.カーニーによれば、上海などの都市がいつか香港(5位)を追い抜き、同国の都市が全体として順位を上げることができるようになるためには、多様性の向上が必要だ。上海市が「上海プライドウィーク」の開催を通じてLGBTQ(性的少数者)の住民たちの自己表現を認め、包括的な都市としての同市の国際的な評価を上げたことが、その好例として挙げられるという。
また、中国政府がより許容しやすい多様性の例としては、高いスキルを習得した外国人労働者の受け入れを増やすことが挙げられるだろう。英国の植民地だった香港には外国人も数多く居住してきたが、その他の都市の大半はそうではない。
中国の都市は過去40年ほどの間に、伝統的な建築物が姿を消すのと同時に、現代の資本主義を象徴するようなガラスと鉄骨を使った高層ビルが林立する都市へと変化してきた。同国の都市化率は、1978年の18%から2018年には60%に上昇。都市人口は現在、およそ8億3000万人に上っている。
そうした急激な都市化に伴い、中国は公害や不手際の多い都市計画などが引き起こす「都市病」に悩むようになった。ただ、2011年以降は、都市化の進行速度が鈍化。最近では、香港の国際的なライフスタイルを手本として計画され、質を重視した開発へと方向を変える様子が見られるようになっている。
報告書によれば、GCIにおける中国の都市の順位が急速に上がってきた主な理由は、こうした変化にある。世界の約130都市を対象に実施した今回の調査の結果では、同国の11都市が100位までに入った。
毎年発表されるGCIは、ビジネスの成長に最も重要なものを提供できる都市、外国人労働者にとって最も魅力的な都市について、企業が判断する際の指標の提供を目的としている。