だが、晴れて転職が決まると、とかく新しい環境への準備にばかり注意が向き、「離職」の際の留意点を確認することがおろそかになりがちではないだろうか。
転職に伴う「離職」に関して知っておくべきポイントを、グローバル人材に特化した英人材サービス大手「ロバート・ウォルターズ・ジャパン」ヘルスケアチーム・アソシエートディレクター吉村午良氏と、「上杉社会保険労務士事務所」の上杉純一氏に聞いてみた。
直属の上司以外には先に話さない
「離職時、社風や上司の方との関係性、また引き継ぐ相手の有無などで状況は変わってきますが、一般的なポイントは以下でしょう」と、まずは吉村氏。
「1.早期に切り出し(通常は1ヵ月前)、2.こちらのペースで進め(『相談』ではなく『報告』というスタンスで)、3.まず退職日を確定させる、そして、4.引き継ぎなどの懸案事項を可視化。現職の現場を安心させる、⑤計画的に引き継ぎや仕事を進め、円満退職をめざす。
中でも、『強い意志を見せ続ける』ことが最も重要です。
『相談』のトーンで話をしたり、慰留条件に耳を傾けたりはせず、転職については『既に決定したこと』とする態度を貫くことが大切なのです。
その上で、会社や部署の方々に迷惑をかけないよう、引継ぎについては、どう迅速かつ綿密に進めるか『相談』する姿勢で臨んでください。
具体的には、 まず直属の上司に話をして下さい。その、さらに上の上長、あるいは同僚、部下などに先に伝えると話がこじれてしまうケースが多々ありますので、それは避けてください。
できるだけ早めに時間を取ってもらい、静かな会議室など、落ち着いた場所で話をします。前もって『ご相談したいことがあります』と切り出してみるとよいと思います」
退職届は基本、口頭で伝えた後「2回目の話し合い」以降に提出
吉村氏はこうも話す。
「どうしても時間を取ってもらえない場合は、タイミングも重要ですので、まずはメールなどで最初の報告をするのも、一つの手段です。
なお退職届は、口頭で伝えた後、2回目以降に提出するのが一般的です。また企業によっては、上長の承諾を得てから事務手続きとして人事に提出するケースもありますので、社内規定を確認する必要があるでしょう。
転職先の社名は言わない方が無難です。トラブルの元になります。『某××系企業』程度ににごすのがよいでしょう。過去には、『転職を妨害された』というケースも多々ありました。
退職理由を聞かれますが、会社批判、現状不満につながる理由は避けましょう。なぜなら、『では、不満なところを変えましょう』、と言われると、ロジック的に行き詰まるからです。
上司のタイプや人間関係の深さにもよりますが、ごまかす場合には、『知人に誘われて、話がまとまってしまいました』程度のニュアンスにしておくか、逆に『どうしてもやりたいことがありまして』と伝えるか、のいずれかがよいでしょう。
また、面談などで話が平行線になったら、いったん持ち帰ってください。『結論が出ないな』と感じたときには、『1日考えさせてください』と言って持ち帰り、翌日『よく考えましたが意志は変わりません』と伝えると、徐々に先方をあきめさせることができます。基本的には、この『作業』の繰り返しです。
そして、『引き継ぎシート』を作成して下さい。『どの案件を』『いつまでに』『誰に』引き継ぐかなど、A4一枚の簡単なものでよいでしょう。慰留された場合にも、この『引き継ぎシート』を提出することをお勧めします」