ラグビーは「ビジネスの疑似体験」 コーチのコーチが説く組織力

中竹竜二 日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター 株式会社チームボックス 代表取締役

今年9月に日本で開催されるラグビーW杯。組織論、リーダー論として語られることの多いラグビーとビジネスの共通項とは?経営者へのインタビューとラグビーの母国である英国を訪ねてその本質を探った。

インタビューやレポートを全5回に渡ってお届けする。

2006年に早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任し、07年度、08年度と2年連続で全国大学選手権2連覇を成し遂げた中竹竜二。

10年3月からは日本ラグビーフットボール協会の初代コーチングディレクターを務める「コーチのコーチ」。そして、現在は世界で活躍できるリーダーを育成すべく、大企業を中心にサービスを提供するチームボックスの代表でもある。

『リーダーシップからフォロワーシップへ』という著書からもわかるように、中竹が「いかに強いチームをつくるか」を考え、出した答えは「カリスマ性の高いリーダーになることではなく、選手に頑張ってもらうこと」だという。

「試合中ラグビーは選手がその場で考えなければなりません。選手が自分たちでディシジョンメイクできるようになるために、どう指導すべきか、指導者たちをトレーニングしています」

だからこそ、中竹が「良いチームの指標」として注目するのは「プレーの切れ目に選手同士が集まり、次のプレーの相談をするチームトークがきちんとできているか」。

中竹曰く、1チーム15人で戦うラグビーはフルコンタクトのスポーツで、ルールも社会の仕組みのように複雑で矛盾もあることから、緊張、油断、友情といった人間らしさが出るという。だからこそ、人材育成の見本になる。

「ラグビーはポジションごとに、カラダの大きさ、敏捷性、持久力など、求められる能力が異なります。役割、個性の違う選手たちが共存する環境のなかで、他のメンバーをどう機能させ、自分もそのなかでどう機能するか。これはビジネスの疑似体験とも言えるでしょう」

自発的に考え、成長でき、グローバルで活躍するリーダー育成を行う中竹から見た「ビジネスパーソンがラグビーから学ぶべきこと」とは何だろうか。

「スポーツでは、圧倒的に練習の時間を長く取ります。それは企業でも同様で、良い人材が育つ組織は、圧倒的に練習して鍛えています。職場内訓練(OJT)をはじめ日々練習をし、課題を見つけ、改善する。それを意識している組織は強い」

中竹が「良いチームの指標」としてあげたチームトークについても、監督時代、日常の練習で写真やビデオ撮影し、「円陣を組む頻度はどうか、話す選手に目を向けているか」など、改善を図った。

「すべては練習とさらに重要なのは習慣化です。特にラグビーは激しいコンタクトがあり、練習を少しでもサボるとパフォーマンスが落ちる。1回の成功で満足せず、習慣化することで結果を出し続けていける。企業でも、そんな習慣を生み出せる組織文化になっていることが大事ではないでしょうか」


中竹竜二◎1973年福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部に入学、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、英国留学、三菱総合研究所等を経て、早稲田大学ラグビー部監督を務める。2010年退任後、日本ラグビー協会初代コーチングディレクターに就任。現在はラグビー界の枠を超え、多方面で活動。

文=青山鼓 写真=Kenta Aminaka

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