内閣府「平成20年版国民生活白書」には、日米を比較した「年齢による幸福度の推移」グラフが掲載されている。アメリカでは高齢期に幸福度が大きく上昇する一方、日本では加齢とともに幸福度が下がっている(図表1)。
図表1 年齢による幸福度の推移(日米比較)
(資料)内閣府「平成20年版国民生活白書」より転載
その理由は明らかではないが、日本の高齢者には年金をはじめとした社会保障制度に対する不安やひとり暮らしによる社会的孤立のおそれなどがあるのかもしれない。いずれにしても、日本には長寿高齢化によりこれまで想定もしなかった社会的課題が生じている。
そのためわれわれはあらたな人生のリスクを抱えるようになり、長寿時代のリスクマネジメントが必要になっている。人生100年時代に幸せな人生を送るためには、定年後に過ごす想像以上に長い時間をどのように生きるのかが、きわめて重要な課題なのである。
長寿時代のあらたなリスク
長寿時代のリスクのひとつは介護と要介護だ。子どもの数が減り、多くの家庭が長男・長女時代を迎えている。その結果、一組の夫婦には4人の老親がいて、高齢者が高齢者を介護する老老介護が生じる可能性も高いのだ。
日本では2000年に公的介護保険制度が導入され、介護の社会化が進んだ。しかし、それでも高齢者介護は同居する家族を中心に支えられているのが実情だ。そのため介護離職をせざるを得ない中高年層も多い。一方で、自分が最期まで健康でいられるとは限らず、長生きは同時に自らの要介護の可能性にもつながっているのだ。
長寿を全うするために安定した経済基盤が必要だ。多くの人にとっては公的年金が中心だが、それだけで十分とは言い難い。そこで人生の最期まで年金をどのように補うかも大きな課題だ。預貯金などの資産の取り崩しで賄うには、長生きすればするほど資産不足のリスクが高まる。