知っているようで知らない、ロゼワインの基礎知識

Gettyimages

四季の表情が豊かな日本に暮らしていて、ありがたいのはその季節そのものを味わうような酒を飲めることだろう。夏、暑かった日の夕暮れに乾杯するビールのひと口めは何にも代えがたいおいしさだし、肌寒くなってきた秋には燗酒がこたえられない。

その調子で行くなら春はなんだろう。春の空を思わせるうすにごりの日本酒もいいけれど、私はやはりロゼワインかな。淡い桜色のロゼは生ハムやサラダなどの軽い前菜によく合うし、ルビーのように色濃く果実味豊かなタイプは肉、魚を問わずメイン料理まで行ける。

それほど多く飲めない人とワインをボトルでオーダーする際には、赤でもない、白でもない、このロゼワインがどんな料理にも合わせやすく、また価格もそれほど高くないから財布にもやさしい。まさにいいとこ尽くめのワインである。

そのロゼワインがどうやって造られているか、きちんと説明できる人は意外に少ない。かくいう私も以前、「ロゼワインって赤ワインと白ワインを混ぜてるんでしょ」と聞かれ、「まさか」と思って調べたら、意外にもそれも製法の一種であると知り、知ったかぶりしないでよかった~と胸をなでおろした経験を持っている。

そこで、ロゼワインの意外に知られていない基本情報を整理していきたい。ワイン好きならおそらくご存じだろうが……6つめはごく私的な見解なのでご意見もあろうが、私の好みということでご容赦を。

1. ロゼワイン用のブドウ品種はない

ワイン用のブドウには赤ワインを造る黒ブドウ(カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、メルローなど)と、白ワインを造る白ブドウ(ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネなど)があるが、ロゼワイン専用の品種というのはない。とはいうものの、ロゼになるのはグルナッシュ、シラー、ピノ・ノワールなどが多い。

2. ロゼワインを最初に造ったのはいつ、どこ?

ロゼワインを最初に造った、というよりは、最初に造ったのがロゼワインだった、というべきか。その歴史は紀元前にさかのぼり、ブドウを自然に任せて発酵させていたころはおそらく薄くピンク色に色づいたワインになっていたと思われるため、ロゼワインの歴史はワインと等しく長い。場所はおそらくコーカサス地方のジョージアあたりか。

3. ロゼワインは赤ワインと白ワインを混ぜてつくる?

これがYESでもあり、NOでもあるトリッキーな質問。まず、ロゼワインの製法には大きく分けて、ブドウを果皮ごと赤ワインと同様の手順でタンクに入れて色を抽出し、適度に色づいた時点で果汁のみ発酵させるセニエ方式、赤ワインの原料である黒ブドウの果汁のみを発酵させる圧搾法、黒ブドウと白ブドウを混ぜて発酵させる混醸法の3つが挙げられる。

ただ、1818年にヴーヴ・クリコ創業者のマダム・クリコは自ら造ったシャンパーニュにブージー産の赤ワインを少しブレンドすることで、ブレンド法によるロゼ・シャンパーニュ造りに成功。これはシャンパーニュにのみ許されているアッサンブラージュ法として、いまも大切に引き継がれているため、「ロゼワインは赤ワインと白ワインを混ぜて造る」は間違いとは言えない。
次ページ > 一番合うのは…焼き鳥?

ForbesBrandVoice

人気記事