ベネズエラの絶望的な未来を示すいくつかの数字

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ベネズエラが大赤字に陥っていることは、間違いない。だが、それがどれほど根深い問題であるかは、少し前まで謎だった──。新たな調査結果から明らかになったのは、同国の状況が単に悪いということではない。ゾッとするほど悪いということだ。

ワシントンD.C.を拠点とする国際金融協会(IIF)が先ごろ発表した報告書によると、ベネズエラの対外債務はおよそ1450億ドル(約16兆円)に上る。債務の大半は、政府と国営石油会社PDVSAの借入金だ。また、それらに比べれば少額だが、民間部門の借入金もある。

ますます減少する輸出収入の一方、外国債権者への借金は増え続けており、これらの比率はおよそ1対7になっている。対外債務の総額は今年、輸出額の7.4倍になる見通しだという。

「打つ手なし」か

米国や英国とは異なり、ベネズエラは債務の返済に自国通貨(ボリバル)を使うことができない。

ベネズエラは、すさまじい勢いで上昇するインフレ率に苦しんでいる。ハイパーインフレーションの専門家でもある米ジョンズ・ホプキンズ大学のスティーブ・ハンク教授(応用経済学)によれば、同国のインフレ率は3月7日現在、年率15万%以上だ。インフレ率がこれほど高い国の通貨は、価値があるとはみなされない。投資家らはその国の通貨ではなく、ドルやユーロなどでの返済を求める。

喉から手が出るほど欲しい交換可能通貨のために、ベネズエラが頼るのが輸出だ。だが、残念ながら輸出で得た収入を全て返済に充てるわけにはいかない。大部分は食料や医薬品、その他の必需品のために使わなくてはならない。PDVSAの石油事業を継続させるため、設備のメンテナンスにかかる費用も必要だ。

IIFの副主席エコノミスト、セルジ・ラナウは、「政策が変更されるまで、ベネズエラには何に使える資金もないと言っていいだろう」と語る。

唯一の頼みの綱にも問題

こうした状況にあるベネズエラにわずかな望みを与えるのは、世界最多とされる原油埋蔵量だ。危機を乗り越え、しっかりとした市場主導型の政策を実行することができれば、経済の回復は見込めるはずだ。ラナウによれば、これは「他の国々にはない特権」だ。大半の国にとって、石油資源は自由に使えるものではない。

ただし、ラナウによると、現在ベネズエラが直面しているような危機の後、石油の生産量を元の水準にまで引き上げるには平均およそ6年がかかる。また、その際に重大な問題となるのは、油井や特殊装置のメンテナンスが行われていたかどうかだ。

ベネズエラではここ数年、適切なメンテナンスが行われていない。さらに、同国のニコラス・マドゥロ大統領はPDVSAでの仕事を、資格を持った技術者ではなく政界の取り巻きたちに与えてしまった。

ハンク教授は、「彼らは人的資本さえ捨ててしまった」と指摘する。それが、「人的資本とインフラの質の低さと無関係ではない安全性の面に、非常に大きな問題を起こしている」という。

これらの結果としてもたらされているのが、現在の悲惨な状況だ。世界各国・地域の経済データを提供するトレーディング・エコノミクスによれば、同国の石油生産量は2014年初めの日量300万バレル程度から、最近ではその半分に近い同150万バレルに減少している。

編集=木内涼子

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