経済に関するどの基準から見ても、英国は大抵、欧州のどの国よりも好調だ。政府が終わりも進展もない交渉で行き詰まっているまさにそのときに、国の経済に今のような状況が見られることは、偶然ではない可能性もある。
当初予定されていた3月29日の離脱の日まであとわずかとなった現在も、英政府はEUとの自由貿易協定などに関して、具体的な成果を何一つ上げていない。外の世界から見れば、英国の政治ショーはフランスの笑劇のようなものだろう。
混乱が前向きに「機能」
それでも、英経済は近隣のEU諸国より好調だ。失業率は、ユーロ圏と比べてはるかに低い。世界各国・地域の経済データを提供するトレーディング・エコノミクスによれば、過去数十年で最も低い3.9%だ。一方、ユーロ圏の失業率は7.8%。特に高いイタリアとフランスでは、それぞれ10.5%、8.8%となっている。
英BBCは先ごろ、「英国の就業率、1971年以来最高に」という見出しと共に、こうした状況について報じた。労働人口に占める就業者の割合を示す就業率は、統計を開始して以来最も高い水準にあるという。
英国の経済成長のペースは緩やかだが、それでも欧州の主要国を上回っている。直近の統計では、成長率は年率で1.3%の伸びとなっており、ユーロ圏全体の同1.1%を超えた。
同じ期間の経済成長率は、イタリアがゼロ、フランスとドイツがそれぞれ、0.9%、0.6%だった。要するに、経済の活力という点において、英国は欧州の経済大国を大幅に上回っているということだ。
政府は「何もしない」のがベスト?
好調な英経済の理由の一部は、政府がほぼ全く何もしてこなかったことにある。つまり、政府はここ数年、ほとんど何も実現できなかったのとあ同時に、繁栄する経済を台無しにするような措置も何一つ講じなかったというのが事実だ。
ウォールストリートで言われるように、政府の手詰まり状態は、政治家が(経済にとって)悪いことを何もしないという意味で、良いことなのだ。
英国が合意なしでEUから離脱した場合もEUでの事業を継続したい金融機関を中心に、一部の企業は英国から転出した。あるいは少なくとも、そうする考えを明らかにしている。今後、英国人の多数がフランクフルトやパリ、またはアイルランドの首都ダブリンに移転していくことになるのかどうか、現時点では分からない。
だが、現在のEUの労働慣行に基づいて考えれば、ロンドンからEU域内に多くの従業員を移すことで、経営者たちは面倒な規制によって身動きが取れない状態になるとみられる。そうなればすぐに、祖国「Blighty(ブライティ、英国)」に逃げ帰りたいと思うようになるかもしれない。