「HTCは、インド市場で中国メーカーに押されて苦戦しており、ライセンス供与は有効な挽回策だ。強力なパートナーと組むことができれば、HTCはロイヤリティ収入が期待できる」とインドの調査会社Counterpoint ResearchのAnshika Jainは話す。
HTCの広報担当者は3月11日、「インド市場における戦略オプションを検討している」とコメントし、報道内容を否定しなかった。
インドでは既に4億人以上がスマホを利用している。HTCがターゲットにするのは、端末価格1万ルピー(約1万6000円)のセグメントだ。この市場は、シャオミやOPPO、Vivoなどの中国メーカーが熾烈な競争を繰り広げ、急速に規模が拡大している。エコノミック・タイムズによると、インドのスマホ人口は、2022年までに倍増する見込みだという。
台湾のコンサルタント会社Quantum International CorpのJohn Brebeckによると、HTCはインドでライバルのサムスンにマーケティングで後れを取っており、市場シェアは2011年前半の11%をピークに下落を続けているという。
HTCは、業績不振からこれまでに2回リストラを実施しており、2014年には台湾証券取引所の株価指数から除外された。2018年には4年振りに黒字転換したが、グーグルにスマホ事業の一部を売却したことによる一過性の業績回復である可能性が高い。
Counterpointのデータによると、インド市場でトップシェアを握るのは中国のシャオミで、2018年第4四半期のシェアは27%だった。2位はサムスンで、3位、4位はいずれも中国ブランドだ。Micromaxは5%で5位、HTCはランク外だった。
「世界のスマホ市場において、インドは3番目の規模を誇り、成長スピードは1位、2位の米国と中国を遥かに上回る。HTCは、まだ競争がそれほど激しくなかった2、3年前にインドへの参入を強化するべきだった」と英国の調査会社Strategy AnalyticsのNeil Mawstonは指摘する。
ブラックベリーをお手本に
HTCにとっては良い参考事例になるのが、カナダの「ブラックベリー」だ。同社がライセンス供与するニューデリー本拠の「Optiemus Infracom」は、インドのほかに東南アジアの3ヶ国において、ブラックベリー端末の設計、製造、販売を手掛けている。
ノキアも、フィンランド企業「HMD」にライセンス供与している。電子機器の受託生産(EMS)で世界最大手の「フォックスコン(鴻海)」の子会社がHMD株式の6%を保有しており、ノキア端末の製造を手掛けている。ノキアのライセンス供与は、市場予想を上回る成果を挙げている。
HTCは、2014年にグーグルのタブレット端末「Nexus」を製造し、昨年1月には2000人が所属するスマホ開発部門をグーグルに売却している。グーグルの目的は、自社製スマホ「ピクセル」の開発だったとされる。