台北の調査企業「TrendForce」のアナリストによると、HTCは近年、業務のアウトソース化を進めており、人員削減はその一環とみられるという。ただし、コンサル企業「Market Intelligence」のEddie Hanによるとリストラ対象となるのは製造部門の社員であり、エンジニアリング部門は含まれていないことから、HTCの今後のコアビジネスに与える影響は致命的なものにはならないという。
HTCは2015年にも人員削減を行なっており、当時は約2300名を解雇していた。同年、台湾証券取引所の株価指数「FTSE TWSE Taiwan 50 Index」(台湾50指数)から除外されたHTCは業績の低迷が続き、昨年は5億6000万ドル(約620億円)の損失を計上。3年連続の赤字を記録していた。
現在のHTCを率いるのは、2015年に経営を引き継いた女性会長のCher Wang(王雪紅)だ。WangはHTCがミドルレンジのスマホに注力していくことを宣言し、海外市場でのシェア回復に務めていくと述べていた。
今年1月にHTCは、ハードウェア事業のかなりの部分をグーグルに11億ドルで売却し、同時に約2000名の従業員をグーグルのPixelやNexus部門に移籍させていた。同社の現在の苦境の背景には、アンドロイド端末市場でサムスンや中国のスマホメーカーに敗退したことがあげられる。
調査企業「IDC」のBryan Maはこう述べる。「HTCが初期のスマホ市場で存在感を示せたのは、優れたエンジニアリングとデザインのおかげだったが、その後はマーケティングに注力するようになった。HTCのプロダクトデザインは今でもワールドクラスと呼べるものだが、シェアが減少するなかでマネタイズが困難になっている」
そんな中、HTCが活路を見出そうとしているのがVR(仮想現実)デバイスだ。同社が「Vive」ブランドで販売するVRヘッドセットはゲーマーたちの支持も高く、今後が期待される。
TrendForce のデータによるとViveの製品は昨年、50万台の出荷台数を記録し、世界のVRデバイス市場で3位のポジションを獲得した。1位と2位はソニーとフェイスブックだった。2017年の世界のVRデバイスの出荷台数は合計370万台に達しており、今年は500万台まで拡大が見込めるという。
しかし、VR市場は堅調な成長が見込めるものの、TrendForceは次のように警告する。「HTCの業績の落ち込みはVRデバイスの売上のみで、埋め合わせが効くものではない」