スターバックスは近年、ハイエンド市場への注力を進めているが、ラッキンコーヒーはそれとは真逆のアプローチで中国市場を開拓している。同社はゆったりとした空間でコーヒーを提供するのではなく、持ち帰りに特化した小型店舗に注力している。
店舗面積を抑えることでラッキンコーヒーは賃貸コストを抑え、「コーヒーを2杯買えば1杯が無料」といったお得なプランを提供している。また、支払いは電子決済のみで、現金は受け取らない。ラッキンコーヒーのメニューは、スターバックスと比べると全体的に割安だ。
同社のCSO(戦略主任)を務めるReinout Schakelは、今年1月に香港のスタンダードチャータード銀行を離れ、ラッキンコーヒーに加わった。「中国の消費者は高品質なコーヒーを手頃な価格で、より便利に楽しみたいと考えている」とSchakelは話す。
昨年12月には、スターバックスとラッキンコーヒーのラテを、目隠しをした状態で飲み比べた結果、「ラッキンコーヒーのほうが美味しい」と宣言した動画がユーチューブに投稿された。TechZG と名乗る西洋人のユーチューバーは、「ラッキンのラテのほうが、香りや味が優れている」と話していた。
ラッキンコーヒーは昨年、1200万人の顧客らに8500万杯のコーヒーを提供したと述べている。同社は先日の、シンガポールの政府系ファンドのGICやChina International Capitalが参加した資金調達ラウンドで、企業価値22億ドル(約2400億円)の評価を受けていた。
ラッキンコーヒーは年内に米国でIPOを実施し、アドバイザーはクレディ・スイスが務めると報道されている。同社は上場により、30億ドル程度の調達を見込んでいるという。
昨年は130億円の損失
福建省の厦門に本拠を置くラッキンコーヒーは、凄まじい勢いで資金を燃焼させながら、中国のコーヒー市場の覇権を握ろうとしている。同社は2018年の損失額が、少なくとも8億元(約130億円)にのぼると見込んでいるが、収益化の見通しは示していない。
しかし、ラッキンの経営陣は今後の成功を確信している。上海のコンサルティング企業China Market ResearchのBen Cavenderは「人々は待ち時間の長さにうんざりしている」と話す。ラッキンの出資には北京本拠のベンチャーキャピタルのLegend CapitalやJoy Capitalも参加している。
Joy Capital創業者のLiu Erhaiは、ラッキンが今後効率性を高め、オペレーションコストを引き下げることで、収益化を達成すると述べている。同社が今追求すべきは、目先の利益よりも規模の拡大だと彼は話す。
「現段階では損失については気にしていない」とLiuは述べた。「それよりもさらに資金を注入して、拡大ペースを上げ、スターバックスから市場を奪うことを優先すべきだ」と彼は続けた。