3月12日、韓国通信大手KTは、VTOL機(垂直離着陸ができるタイプの機体)を開発するウリ航空、地上管制システム(GCS)を開発するシンクスペースなど国内企業と提携。最大飛行速度100km/h、かつ音声認識機能を搭載した次世代ドローンの開発を進めていくと発表した。
なお、音声認識プラットフォームにはKTが開発を進めている「GIGA Genie」が使われるが、これにより専門家や訓練を受けたオペレーターでなくとも、ドローンを遠隔地から音声だけで制御できるようになるという。しかも、KTは今回開発するAIドローンを、世界では初めて5Gネットワーク上で動作させると意気込んでいる。
ところで、これまでドローンとセットで用いられてきたAI技術には、主に「画像認識」もしくは「画像処理」に関するものが多かった。例えば、施設の老朽化を自動でチェックしたり、目視では発見しにくい森の中の害獣を発見するなどの用途がそれにあたる。ホビー用の機体であれば、対象を正確に認識・追跡・撮影する用途でAI機能が用いられはじめている。
そういう意味合いでは、今回、KTが音声認識機能を取り入れたというニュースは、新たなドローンの可能性を示唆するものとなろう。
日本では、自然言語処理技術をドローンと融合させたプロダクトも登場している。
3月上旬、IT企業のクオリティソフトは、災害発生時に広域アナウンスや避難誘導に用いる「アナウンサードローン」を開発・受注開始した。こちらの機体は、よく聞こえない、特定の位置にピンポイントで伝達できないなど、従来の防災スピーカーの限界を克服すべく開発されたもの。
コンセプト自他がとてもユニークだが、さらに興味深いのは日本語の文章から自然な音声データを生成し、28カ国語に翻訳することができる「AIアナウンス機能」を備えている点だ。“しゃべるドローン”と言うと少し大げさかもしれないが、音声および言語とドローンを組み合わせるという発想は他にあまり前例がない。
民間企業の努力が続く一方、日本では「飲酒操縦禁止」「五輪会場でドローン禁止」など、相変わらずリスク軽減のための法規制が議論・優先されている印象が否めない。ブームの再到来、また新たな技術との融合が進むドローンだが、日の目を見られる環境が整うことを祈るばかりである。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>