AIチップ競争も激化、2019年注目の「人工知能」5大潮流

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2018年は、機械学習やAI(人工知能)を用いたプラットフォーム、アプリケーションの飛躍的な普及が見られた。これらのテクノロジーは、インターネット業界だけでなく、ヘルスケアや農業など様々な業界に多大な影響を及ぼしている。

今後は機械学習やAI関連のテクノロジーがますます進化を遂げることが予想される。2019年に注視すべき5つのAIトレンドを以下に紹介する。

1. AIチップの勃興

AIは、他のソフトウェアと異なり特殊なプロセッサに依存する。最新のCPUでもAIモデルのトレーニングを高速化することは難しい。物体認識や顔認識など複雑な数学的処理を実行するためには、ハードウェアの増強も求められる。

2019年にはインテルやエヌビディア、AMD、アーム、クアルコムなどの企業が、AIアプリケーションを高速化させる特殊なチップを販売する予定だ。これらのチップは、コンピュータビジョンや自然言語処理、音声認識など特定のユースケースに最適化されており、ヘルスケアや自動車業界の次世代アプリケーションはこれらのチップに依存することになる。

また、2019年にはアマゾンやマイクロソフト、グーグル、フェイスブックなどの企業が「FPGA」や「ASIC」をベースにしたチップの開発を強化するだろう。これらのチップは、AIやハイ・パフォーマンス・コンピューティング(高性能計算)を用いたワークロードに最適化される。一部のチップは、次世代データベースでクエリ処理や予測分析の高速化を実現する。

<この領域で進行中のプロジェクト>
アマゾンの「Project Nitro」、グーグルの「Cloud TPU」、マイクロソフトの「Project Brainwave」、インテルの「Myriad X VPU」。

2. エッジにおけるIoTとAIの融合

2019年には、IoTデバイスから近い場所でコンピューティングを行う、エッジコンピューティングの重要性がさらに増す。このレイヤーにおいて、AIとIoTが融合することになるだろう。パブリッククラウドでトレーニングされたモデルの多くは、エッジコンピューティングに実装される。

現状、AIが最も多く導入されているのは、産業機器の異常値検出や根本原因解析、予知保全といった産業IoTだ。今後は、ディープニューラルネットワークを用いた機械学習モデルがエッジでも利用されるようになり、カメラやマイクが生成したビデオフレームや音声合成、時系列データ、非構造化データを処理できるようになる。

エッジデバイスは、「FPGA」や「ASIC」をベースにしたAIチップを搭載し、産業IoTが引き続きAIの普及をけん引するだろう。

<この領域で進行中のプロジェクト>
AWS(Amazon Web Services)によるエッジで機械学習推論を実行できる「AWS Greengrass」の提供、「Azure IoT Edge」によるAIツールキットの提供、グーグルによる「Google Cloud IoT Edge」の提供、「FogHorn Lightning Edge Intelligence」の提供、TIBCO による「Project Flogo」。

3. ONNXが相互運用性の鍵に

ニューラルネットワークモデルを構築する上で重要なポイントは、最適なフレームワークを選択することだ。データサイエンティストや開発者は、Caffe2やPyTorch、Apache MXNet、Microsoft Cognitive Toolkit、TensorFlowなど数ある選択肢の中から最適なツールを選ぶ必要がある。

特定のフレームワークを使ってモデルのトレーニングや評価を行った後では、別のフレームワークに移植することは困難だ。ニューラルネットワークのツールキット間で、相互運用ができないことが、AIの導入を妨げている。

この課題に対処するため、AWS、フェイスブック、マイクロソフトは「ONNX(Open Neural Network Exchange)」を共同で構築し、トレーニング済みのニューラルネットワークを複数のフレームワークで再利用できるようにした。

2019年には、ONNXは業界にとって不可欠なテクノロジーとなることが予想される。研究者からエッジデバイスのメーカーまで、AIエコシステムの主要プレーヤーは、推論を行うための標準ランタイムとしてONNXを使うようになるだろう。

<この領域で進行中のプロジェクト>
Windows 10によるONNXのサポート、インテルの「OpenVINO」がONNXに対応。

4. 機械学習の自動化が発展

機械学習モデルの開発を自動化する「AutoML」は、機械学習ベースのソリューションを根本から変える可能性を秘めている。これにより、アナリストや開発者はモデルをトレーニングすることなく、複雑なシナリオに対処する機械学習モデルを構築することが可能になる。

アナリストは、AutoMLプラットフォームを利用することでプロセスやワークフローで迷うことなく、ビジネス上の課題解決に専念することができる。AutoMLは、コグニティブAPIとカスタム機械学習プラットフォームを結ぶ最適なソリューションだ。

開発者は複雑なワークフローを経ることなく、最適なカスタム化を実現することができる。コグニティブAPIがブラックボックスと受け止められることが多いのに対し、AutoMLは同レベルの柔軟性に加え、カスタムデータと移植性も持ち合わせている。

<この領域で進行中のプロジェクト>
DataRobot、Google Cloud AutoML、Microsoft Custom Cognitive API、Amazon ComprehendのCustom Entities

5.「AIOps」による自動化が進行

ハードウェアやOS、サーバソフトウェア、アプリケーションによって取得された膨大な量のデータを分析することで、知見やパターンを導き出すことができる。これらのデータセットに機械学習を導入することで、従来の受動的なITオペレーションを変革し、将来を予測することが可能になる。

機械学習やAIのITオペレーションやDevOpsへの導入は、組織にインテリジェンスをもたらし、オペレーションチームは精度の高い根本原因解析を行うことが可能になる。2019年には、AIOpsが主流になることが予想される。AIとDevOpsの融合は、パブリッククラウドのベンダーや企業に大きなメリットをもたらすだろう。

<この領域で進行中のプロジェクト>
Moogsoft AIOps、Amazon EC2 Predictive Scaling、Azure VM resiliency、Amazon S3 Intelligent Tiering

機械学習とAIは、2019年も引き続き主要なテクノロジートレンドとなり、AIはビジネスアプリケーションからITサポートまで、幅広い分野で大きな変化をもたらすだろう。

編集=上田裕資

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