記事はその他、「米国が明らかにした現時点で双方が合意できない最大の問題点」について、次のように説明した。
「米国は中国が合意内容を完全に履行していないと判断した場合、自国はいつでも中国製品に懲罰的な関税を課すことができるとしている一方、中国が米国に報復することは認めないとしている」
「中国は、これが自国の主権に対する侵害に当たると主張。米国の提案を拒否している」
この記事が掲載される少し前まで、両国は根本的な相違点を全て解決できたのではないかと推測され、貿易協議は合意に近づいているようにみられていた。
無意味な合意は不要
二国間の合意は、実行されなければならない。さもなければ、両国が署名した合意文書は、何の意味もなさないものになってしまう。
日米が1980年代前半に署名した文書が、そうした合意の例だ。この合意の後、連邦議会が1988年に包括通商競争力法を可決・成立させ ると、米政府は1990年代に入り、「結果志向の合意」を目指すことになった。
米国は日本を不公正な貿易相手である「優先監視国」に指定。日本が貿易協定を履行しなければ制裁の可能性もあるとして、監視を継続した。
予想された通り、こうした米国の要求は日本からの強い批判を招いた。当時の外務省は、「一方主義(ユニラテラリズム)と、二国間主義(バイラテラリズム)やセクター主義、管理貿易的な傾向はいずれも、多角的貿易体制を脅かし、関税貿易一般協定(GATT)のウルグアイ・ラウンドに損害を与える」と非難した。
その後のことは、皆さんもご存知の通りだ。日本は最終的に、米国の要求に屈した。貿易戦争は回避され、日本経済は現在にまで至る不安定な状況に陥った。
米政府はどうやら、日本に対して取ったのと同じ方法で、中国との貿易交渉を進めようとしているようだ。だが、それがうまくいくことはない。
中国は日本ではない。アヘン戦争などの例からも分かるように、負ける可能性が極めて高い場合でも、外圧に屈することはない。それは、歴史が示していることだ。だからこそ、米国は中国に対し、自ら戦いから「降りる」余地を与えるべきだ。