それは、アフリカの人々、そしてクリーンエネルギーについてだ。より具体的に言えば、人口が増すこの地域の人々に、気候に優しい方法で電力を供給する必要性を訴えたのだ。
慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」は、予算のおよそ半分に当たる年間20億ドル(約2222億円)を、アフリカ支援に充てている。特に力を入れているのは、生活水準の向上に不可欠な医療とアグリビジネスだ。
そして、同様に重視しているのが、約50万人が電気のない生活をしているこの大陸への電力供給だ。電力は、繁栄のために欠かせない要素だ。2050年には人口が11億~20億人になると予測される中、今こそこれを実現する必要がある。
国際エネルギー機関によれば、サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)は電力供給の基盤を近代化するため、2035年までに約4000億ドルを必要としている。また、世界銀行グループは低炭素の未来を築くことを目指し、2025年までに世界全体で2000億ドルの投資を行う方針を明らかにしている。
ただ、ゲイツは昨年末に自身のブログで、「私たちはより多くの人にこの課題について知ってもらうため、より努力をしなくてはならない」「だが、裕福な国々が内向きになっていること…そして、この問題に対する努力がコストに見合わないと判断することを懸念している」と述べている。
ゲイツが設立した10億ドル規模のベンチャー・ファンド(VC)、ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズは、年間の温室効果ガス排出量を5億トン削減するという非常に高い目標を掲げている。
このVCの目的の1つは、有望なテクノロジーに投資することだ。そして、ゲイツがそうした技術として最も高い関心を向けているのが、原子力エネルギーだ。炭素を排出せず、スケーラブルでいつでも利用可能であることから、気候変動問題に対応するためには理想的な燃料だとみている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、発電によって排出される温室効果ガスは、世界の全排出量の25%を占める。製造業と農業からの排出量は、それぞれ21%、24%だ。
ゲイツ夫妻は、アフリカ大陸への電力供給が拡大し、この地域が繁栄すれば、全世界が利益を得ることになると強調する。だが、彼らとドナルド・トランプ米大統領の考え方に共通点はあるだろうか?
トランプは孤立主義者で、国家は自国の問題に集中する必要があり、リソースは国民のために確保されるべきだと主張する。