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2019.03.06 08:30

現地在住の日本人起業家に聞く、エストニアの投資事情

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東欧の国エストニアは、いまやブロックチェーンと言えばこの国と言われるくらい、世界中に名を轟かせるようになった。エッジの効いた投資家や起業家だけではなく、各国の政府関係者の注目も浴びている。スタートアップ企業の成功率は世界でいちばん高い。

人口は130万人だが、スタートアップ企業の成功率も高く、ユニコーン輩出率は世界トップとなっている。スカイプを筆頭に、TrasferWise、Playtech、Taxifyappなどもエストニアから生まれた。投資額もヨーロッパで上位に入る。政府がスタートアップを支援する仕組みも強化され、シリコンバレーの著名なエンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)も、こぞってエストニアに投資している。

筆者はシリコンバレーと日本を往き来して5年ほどになるが、昨年は、世界から注目されているイノベーションのハブとなっているイスラエル、フランス、中国、フィンランド、そしてエストニアを訪れた

8月の訪問時に、ブロックチェーンのスタートアップ「blockhive」の共同創業者で、政府のアドバイザーも務める日本人起業家、日下光氏に会うことができた。そして、今年2月、日下氏が東京大学や慶応大学で講演するために来日した際も、都内で2回ほどミーティングをした。



今回の記事では、その注目の地の最前線で活躍する日下氏に聞いたエストニアのVC事情を紹介しよう。

投資もオンラインで完結

エストニアにはEstBAN(Estonian Business Angels Network)というエンジェル投資家の団体があり、新しくエンジェル投資を始めたい人を対象としたトレーニング、ピッチイベント等の運営を始め、ディールフローの提供まで行っている。

EstBANは2013年に設立され、これまでの総投資件数は713件、総投資金額は3622万2190ユーロ(約45億円)、イグジットは52件。2017年までで、そのうちの60%近くがエストニアのスタートアップを投資対象としている。主な投資セクターは、ICTが39%、フィンテックとB2Bが12%、クリエイティブインダストリーが11%だ。

そのエンジェル投資で最近注目を集めているのが、Funderbeamの存在だ。これは未公開スタートアップの資金調達プラットフォームで、エンジェル投資家はそこでプロジェクトを見つけ、投資することができる。

仕組みとしては、FunderbeamがSPV(特別目的事業体)を組成して、エンジェル投資家はSPVの債権を持ち、SPVが投資先スタートアップの株式を所有し、イグジット時の利益を投資家に還元するというもの。

これにより、法務手続きや税務の面倒がなく、オンラインで投資できるので、新しいスタートアップとの出会いから投資までがスムーズになるというメリットがある。エストニアでは、個人でも数百ドルから数千ドル規模のエンジェル投資をこれで行うことがある。
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文=森若幸次郎

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