エストニア国内には世界的に目立ったVCは存在しないが、シリコンバレーを代表するYコンビネータやティム・ドレイパーなど、海外VCからこの国のスタートアップは注目されている。前述のFunderbeamのほか、オンライン本人確認サービスのVeriff、コワーキングスペースのLIFT99も、アメリカや日本などのVCから投資を受けている。
エストニアでは、スタートアップが銀行から資金を調達するケースはほとんどないそうだ。とくにICTセクターが中心のため、シード期では銀行融資を受けられるケースはほとんどなく、ひとたびVCや他の投資家からの調達に成功すれば、シード期以降となっても、銀行と関わるメリットはなくなるためだ。
また、この国では、IPO(新規上場)はメジャーなイグジットシナリオではなく、ほとんどのスタートアップはバイアウトになるという。背景としては、この地域の株式市場が非常に小さいことなどもあるが、エストニア最初のユニコーンであるスカイプもバイアウトだった。
こうしたユニークな環境は、子供の頃からプログラミングと起業家精神の両方を学び、「コードが書けて、ビジネスセンスのある起業家」が生まれやすいエストニアならではかもしれない。IT先進国、ブロックチェーン大国としても注目を集めるこの国の教育についても、いずれ触れてみたいと思う。
連載:イノベーション・エコシステムの内側
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