同社は2015年8月にDeNAの新規事業としてスタートしたが、2018年2月に当時、DeNAの執行役員で開発を指揮していた赤川隼一が、MBO(経営陣による買収)を実施して立ち上がった企業。現在、Mirrativの配信者数は100万人を超え、自社調べでは国内最大規模の配信者を誇るサービスへと成長を遂げている。
ミラティブ躍進の要因として、誰でもバーチャルYouTuber(VTuber)のように配信・ゲーム実況ができるアバター機能「エモモ」などサービスの機能面に注目が集まりがちだが、それだけではない。組織力の強さも躍進の要因だ。
最近では、Gunosyの上場を支えた元取締役CFOの伊藤光茂氏がミラティブのCFO(最高財務責任者)に就任したほか、ゲームポット創業者の植田修平が韓国事業の責任者に就任するなど、経験のある“ベテラン勢”が参画を決めている。
そして本日、新たにセガゲームス取締役CSOの岩城農が同社のCSO(最高戦略責任者)に就任することが明かされた。
(左)ミラティブ赤川準一 (右)元セガゲームス取締役CSOの岩城農
なぜ、立て続けにベテラン層がミラティブへの参画を決めているのか? その背景にはミラティブの徹底した「組織づくり」へのこだわりがあった。
スタートアップの成功例の増加が追い風に
「ずっと何らかの形でいっしょに仕事をしたいと話をし続けてきて、お互いに共感する部分があったので入社を決めてくれたんだと思います」と赤川は笑いながら話すが、CXO職に就き、企業の経営に携わっていたベテラン層が少人数のスタートアップへ転職するケースが増えてきている。
有名な事例を挙げるならば、まだ少数だった時期のメルカリに参画を決めた小泉文明、共同代表としてGunosyの創業に関わった木村新司などがそうだろう。
ベテラン層のスタートアップ参画について、赤川は「まず、前提として人材採用や人の流動性、どういう場所で働くかの世の中の考え方が変わってきている」とした上で、 主に外的要因の変化が大きいという。
最も顕著な変化は「スタートアップの成功例」が増えてきたこと。2000年代初頭、スタートアップと言えば、数人の若いギークたちがマンションの一室でサービスを開発する。ちょっとした怪しいイメージがあったが、今やそのイメージも過去のものだ。
ミクシィやDeNA、グリー、サイバーエージェントなどがITメガベンチャーになったり、最近ではメルカリが大型上場したり。スタートアップの成功例が続々と生まれている。
「シリコンバレーの今をつくった要因のひとつは、冴えないギークの友達が突如として億万長者になり、多くの人たちが『俺にもできるのに……』といった『健全な嫉妬』をしたから。それと同じようなことが日本でも起き始めていて、スタートアップの成功事例が増えたことで、ベテラン層の転職先としてスタートアップが選択肢に入るようになっている」(赤川)
また、成功例が増えたことで20代でExit(イグジット)を経験した起業家も現れ始めている。赤川曰く、「2周目〜3周目の人たちが仕事に求めるものも変わってきている」と言う。
「高い報酬や世間的ポジションではなく、理想の組織の追求や人間らしい幸せの追求など、“青臭い”ものを追求した方がいい。小さい規模のスタートアップなら、それが実現できる。そういう考えで、スタートアップに参画を決める人も多いと思います」(赤川)