この施設は、従来のジムやヨガ、ピラティスといった身体的なエクササイズプログラムはもちろんのこと、コーチングや瞑想、マインドフルネスセッションといった精神面のアプローチをするプログラムが充実しているところが特徴。各分野のプロフェッショナルが在籍し、会員の要望とニーズにあわせてセッションが受けられる仕組みとなっている。
シンガポールのフィットネス市場は、前年比10%以上で成長している。さまざまなプレイヤーが現れ、競争も激しくなりつつある。そのなかで新たに参入したこの複合施設が掲げるコンセプトは、いまアジアで広がりつつある新たなトレンドを示している。
デジタルノマドの聖地バリ島で
シンガポールの近くにあるインドネシアのバリ島。豊かな自然と独自の文化で多くの観光客を魅了するリゾートのイメージが強いが、近年はコワーキングスペースやコリビング施設が島の至る所で立ち上がり、場所にとらわれずに働く「デジタルノマドに人気の旅先」ランキングでは1位に選ばれている。
インターネットを駆使して、旅をしながら仕事をする。こうしたデジタルノマドの長期滞在者が増えるなかで、島内にはフィットネススタジオやヨガスタジオも急増。それらの施設で、エクササイズ関連のプログラムと並行して、メンタル面に関わるプログラムが設けられていることが多いのだ。
バリ島の西部の海沿いの街チャングーも、世界中からデジタルノマドが集まる街。そこにあるヨガスタジオ「The Practice」もこのトレンドを裏づける場所のひとつで、施設の中には、コーチングプログラム専用の部屋が設けられている。
「セルフケア」できていますか?
テクノロジーの発達により格段に便利な社会なった今、その劇的な変化についていこうと、私たちはつい意識が「外側」に向きがちになる。そうして自分の「内面」と向き合えずにいることは、精神的な健康を害する大きな要因にもなっている。
グーグルをはじめとしたグローバルIT企業が、マインドフルネスのムーブメントを大衆化し始めて久しいが、ここ数年、世界的に「自分で自分をいたわること」を指す「セルフケア」という言葉が、トレンドワードとして浸透してきている。身体的な健康を維持することが「ヘルスケア」だとすれば、「セルフケア」という言葉には、気持ちや感情などを含めた精神面をケアするという意味合いが強く含まれる。
身体だけではなく、マインドもセルフケアする。それは、テクノロジーの利便性と共存し、うまく折り合いをつけながら生きていかなければならない現代人の、新たな習慣なのかもしれない。シンガポールやバリ島に見られる新たな動きは、そう遠くないうちに、各地に広がっていくだろう。
連載: 世界の「Work-Life-Living 」トレンド
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