女性AIアナウンサーの名前は「新小萌」。実在するジャーナリスト・屈萌氏の顔をモデルにしたもので、AI男性アナウンサー同様、検索ポータルの搜狗と新華網が共同で製作した。
新華網は同日、邱浩の新バージョン「新邱浩」もリリースしている。新邱浩は、より滑らかに、自然な身振り手振りを交えながら情緒的にニュースを伝えるようグレードアップされたという。
新華網のAIアナウンサーは、実際のアナウンサーの映像から声、唇の形、表情などを抽出し、ディープラーニング技術を用いて再現された。テキスト記事を入力すると、AIアナウンサーは人の声や口の形を真似てニュースを伝える。
人間のアナウンサーの勤務時間が1日およそ8時間なのに対し、AIアナウンサーは疲れ知らず。24時間稼働できるため、コスト削減や緊急報道番組の迅速な制作などのメリットが期待されている。新華網の説明によれば、昨年11月のリリース以降、すでに約3400件の報道、時間に換算すると合計1万分のニュースを報じる実績を積んでいるという。
なおAIアナウンサー導入から数カ月がたち、中国では好意的に捉える視聴者がいる一方、人間の方が良いという意見も根強く残っているという。AIアナウンサーはまだまだ機械的かつ不自然であるというのが反対派の意見だ。
新小萌は、3月5日に開催される中国最大の政治イベント・全国両会(全国人民代表大会および全国政協会議)で正式に大衆に向けて公開される予定だという。思うに、AIアナウンサーを積極的に推す背景には、中国政府によるAI産業に対する啓発およびPRも含まれているのではないか。AI大国になると宣言している中国にとって、放送網を通じてAIアナウンサーを露出することは、自国の人々に国の政策を広く認知させることに繋がるからだ。言い換えれば、AI時代のシンボルであり広報大使だ。
現在、邱浩、新小萌などAIアナウンサー以外にも、ハンソン・ロボティクス社のAIロボット「ソフィア」が、国連など世界各国でスピーチを行い注目を集めている。人間と機械が共生する時代が迫っているとされる昨今、広報大使としてのAIの存在も今後増えていくのかもしれない。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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