テクノロジー

2019.01.31 18:30

視聴者10億人の中国テレビ番組に世界初の「AI司会者」が登場

春節聯歓晩会で司会を務める Bo Gao (高博)と彼のアバター(c)ObEN Inc.

春節聯歓晩会で司会を務める Bo Gao (高博)と彼のアバター(c)ObEN Inc.

世界初のAI(人工知能)司会者が、中国中央テレビ(CCTV)で放送される春節の番組、「春節聯歓晩会(Spring Festival Gala)」に登場する。世界で10億人を超える視聴者数が予測されるこの番組には、有名タレント5名のAI版が出演し、司会を行うという。

今回のAI司会者は、人工知能テクノロジー企業のObEN Inc.が作成したもので、同社はこれが「世界初のAI司会者」であると述べている。

ObEN は同社のAIテクノロジーで単なるアバターを作成するのではなく、マシンラーニングやコンピュータビジョン、自然言語処理や音声合成技術などを駆使し、有名人のバーチャルなコピーを「再構築」したと述べている。

CEOのNikhil Jainはフォーブスの取材に、同社のパーソナルAI(PAI)技術は、社会に大きな革新をもたらすと述べた。PAIテクノロジーを用いた、医者や看護師、教師の開発も進行中という。

出張で家を空けることの多いJainは、当初は自分の子供たちのためにこの技術を開発したという。「自分のデジタルコピーが家にいて、私と同じように会話ができるとしたら、子供たちが寂しく感じることを減らせると思った」

人間そっくりなデジタルアバターはこれまでにも存在したが、ObENのAIアバターは実在する人物と同様な動きや会話ができる点が特徴だ。既存のアバターはあらかじめ入力した動きをするのみだったが、ObENのプロダクトはAIが状況に応じた対応を行うという。

ObENはニューラルネット技術を用いてデータのインプットを行い、その人物の声や話し方、動きや行動などのパーソナリティを忠実に再現するという。

出資元にはテンセントとソフトバンク

「データをインプットし、AIが学習することにより、会話を行うだけでなく、歌うこともできるようになった」とJainは話す。「さらに、本人が話せない外国語で話すこともできる。英語で入力を行い、中国語や日本語、韓国語で会話を行うことも可能だ」

ObENはこれまでアイドルグループSNH48のアバターを製作したほか、多くの中国人のセレブのAI版も手がけてきた。同社はWeChat経由で、アバターと会話ができるプラットフォームも開発している。

既にテンセントやソフトバンクからも出資を獲得したObENは、同社のAIテクノロジーをさらに広範囲な領域に導入しようとしている。「ヘルスケア領域への進出も進めている。バーチャルなドクターやナースが、健康関連の質問に答えるなどの利用法も想定できる」とJainは話した。

編集=上田裕資

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