イギリスのラグジュアリーブランドや企業を支援する業界団体ウォルポール(Walpole)によると、ラグジュアリー業界は過去4年で49%の成長を遂げている。同団体のヘレン・ブロックルバンク (Helen Brocklebank)最高経営責任者(CEO)は、2月5日に開催された「Future of British Luxury Summit」(以降ウォルポール・サミット)でスピーチを行い、加盟組織のなかには、2018年に記録的な売り上げを達成した企業があると述べた。
イギリス高級車メーカーのロールスロイスとマクラーレンの両社は2018年、それぞれ会社史上最多の販売台数達成をしている。
免税決済サービス企業のグローバル・ブルー(Global Blue)のデータによると、免税品の販売(何より、イギリスを訪れた裕福な旅行客による爆買い)に関して言えば、イギリスにおけるラグジュアリー製品の売上は過去5年間、他のEU諸国よりも速いスピードで伸びている。
しかし、より広い業種を含めた小売業の業績となると、ラグジュアリー業界とは正反対だ。ラグジュアリー以外の小売業界は、利益を出し続けるために何万人もの従業員を解雇せざるを得ない状況にある。イギリスのラグジュアリー業界は、そうした流れに、あとどのくらい抵抗していられるのだろうか。
ラグジュアリー業界にとってのブレグジット
世界中の富裕層にとって、英国らしさの漂うラグジュアリー製品は大きな魅力だ。
ウォルポールによると、イギリスのラグジュアリー製品のおよそ78%は、輸出される予定だという。主な行き先はアメリカだ。
一方、イギリスにやってきて高級ブランドを買いまくっているのは、中国人旅行客だ。グローバル・ブルーによると、免税品売上の32%を中国人旅行客が占める。次いで多いのが、アラブ首長国連邦やサウジアラビア、カタールを中心とした湾岸地域からの旅行者だ。
グローバル・ブルーのジャック・スターンCEOは、そうした旅行客を「エリート・ショッパー」と呼ぶ。彼の推定では、エリート・ショッパーは1回のイギリス訪問でラグジュアリー製品に平均3万ポンド(約423万円)を注ぎ込んでいる。「イギリスを訪れる買い物客は、真っ先にイギリスのブランド店に向かう」
だからといって、イギリスのラグジュアリー業界がブレグジットの影響を逃れられるわけではない、とスターンCEOは釘を刺す。イギリスを訪れた旅行客全体で見ると、他のEU加盟国も訪れる予定があるのはわずか25%だ。
しかし、「エリート・ショッパーの場合はその割合が逆転している」と同CEOは言う。つまり、「エリート・ショッパー」の75%は、イギリス旅行の前後にほかのEU加盟国を訪れているのだ。したがって、ブレグジット後のラグジュアリー製品の売上は、イギリスとEUが結ぶ今後のビザ協定に左右されるだろう。