創業13カ月でIPO実施のバイオ医薬品企業、女性CEOの挑戦

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2015年にバイオ医薬品企業のセルジーンが、同業のレセプトスを買収した当時、Sheila Gujrathiは、レセプトスのチーフ・メディカル・オフィサーを務めていた。「共に研究を続けてきたチームを失うのは辛かった」とGujrathi はその頃を振り返る。

しかし、レセプトスの買収はGujrathiに転機をもたらした。彼女はセルジーンには移籍せず、レセプトスの元CEOのFaheem Hasnainや同僚たちとともに、その後2年をかけて新たなスタートアップ企業を設立した。

Gujrathiは昨年1月にサンディエゴで「Gossamer Bio」を設立し、同社のCEOに就任した。免疫系医療薬に特化した同社は3億ドル(約330億円)以上の資金を、ARCHやPolaris Partnersなどのベンチャーキャピタルから調達した。そして、2019年2月7日にGossameは上場を果たし、2億7600万ドルを調達した。

Gossameは腫瘍や好酸球性ぜんそくの治療に用いる免疫治療薬を開発中だ。創業から1年の企業がIPOに踏み切ること自体が異例だが、今年1月に米国の政府機関閉鎖に直面した同社は、通常では稀な、株価を固定したIPOを行うと宣言した。しかし、1月25日に政府機関が再開すると、Gujrathiは通常の手続きでのIPOを実施すると発表した。

GossameがIPOを急いだ背景には、同社の資金燃焼スピードの早さがあげられる。SECへの提出書類によると、Gossameの2018年9月1日時点の現金残高は2億5600万ドルだったが、月末には1億900万ドルまで減少していた。

同社は現在、ぜんそくや慢性鼻副鼻腔炎の治療薬のテストを重ねている。S-1書類によると、Gossameは同社の錠剤の臨床試験を日本で実施し、400名に錠剤を投与した。その結果、プラセボ対照比較で統計学的に有意な効果をもたらすことができたという。

しかし、約200名を対象に別の薬品との比較実験を行ったところ、期待したような効果は得られなかった。Gujrathiによると、臨床試験に適した症状を持つ、被験者の数が十分でなかったことが原因だという。Gujrathiは今後、新薬の開発に成功することを確信している。


「会社を立ち上げた当初から、この分野の平均的な企業を上回る確率で、プログラムを成功に導けると信じていた」と彼女は話す。しかし、Gossamerの薬品が市場に出回るまでに、まだ数年はかかりそうだ。

Gujrathiによると、Gossamerが新たな臨床試験データを開示するのは2020年以降になるという。同社はまた、リジェネロンやサノフィといった企業との競争にも直面している。

Gossamerはここ2カ月の間で相次いだ、バイオテック分野でIPOを果たした企業の群れに加わった。最近注目を集めた企業としては、上場で6億ドルを調達したModernaがあげられる。しかし、同社はIPO後の数週間で時価総額の3分の1以上を失った。

「今から1年後、さらに様々な臨床試験を開始する。ここまでプロジェクトを続けてこれたことに感激している」とGujrathiは話した。


編集=上田裕資

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