そのイタリアから、デニムウェアを取り入れたまったく新しいライフスタイルを提案し、ラグジュアリーでもカジュアルでもない新領域「プレミアム・カジュアル・ウェア」を開拓したブランドがある。その名は「ディーゼル(DIESEL)」。
銀座の旗艦店を始め日本国内にも多くの店舗を持つこのディーゼルのCEO、レンツォ・ロッソは、売上高15億2000万ユーロ(2017年実績・約2000億円)のアパレルグループ「オンリー・ザ・ブレイブ・ホールディング」代表でもある。
「フォーブス・イタリア」2018年11月号本誌掲載、ロッソ氏インタビューの翻訳許諾を得たので全文を紹介したい。
ディーゼル創業者レンツォ・ロッソ(Tristan Fewings/Getty Images)
ディーゼル創業者レンツォ・ロッソ。23歳で会社を起業してデニムのコンセプトに革命を起こした、「デニムのカリスマ」である。
ロッソが母親のミシンで初めてのジーンズを完成させたのは15歳のときという。
1955年生まれの彼は、「ディーゼル」創業者であるほか、「メゾン・マルジェラ」や「ヴィクター&ロルフ」、「マルニ」といったそうそうたるファッションブランド、そして「スタッフ・インターナショナル」を傘下におく「オンリー・ザ・ブレイブ・ホールディング」代表でもある。ちなみにスタッフ・インターナショナルは、「ディースクエアード2 」「ジャストカヴァリ」「ヴィヴィアン・ウエストウッド」 の製造販売元である。
起業した1978年当時、ジーンズは完全に「アメリカのもの」で、参入したいと考えるものはイタリアに1人としていなかった。
しかしロッソは、まれな発想力とその大胆な性格から、独創的なデニムウェアを、イタリア北東部ヴェネト州発で立ち上げることを思い立った。
40年経ったいま、そうそうたるメゾンコレクションのランウェイを闊歩するジーンズの存在感は、もはや不動だ。ミラノ、パリ、ロンドン、そしてニューヨークで行われた2019春夏コレクションには「デラックス加工」のデニムを使ったスカート、パンツ、ジャケットやシャツが並び、デニムがハイブランドのワードローブにも取り入れられ得る素材であることが広く印象づけられた。今後の新たな発展の兆しもある。
━━起業当時のあなたにとって、ジーンズとは?
70年代、ジーンズは「反抗のシンボル」であり、親子の距離を広げるファッションでもありえました。大人はタック入りのパンツ、対して若者はスリムなジーンズ。当時、ジーンズはとにかくクール、かっこよさの象徴で、荒々しく自由を希求する、どこか社会運動のようなものも体現していた。ジーンズは、そういう社会運動に憧れる若者たちのものでした。
━━たしかに、当時のジーンズのイメージは現在のそれとは大きく異なります。ジーンズはなぜ評価され続け、ハイブランドのバーを飛び越える成功をも獲得できたのでしょう。
現在、ジーンズはたいていどんな場面でも身につけられますが、その稀有な特色は、ほかにはない意外な形に自ら変貌できるし、ファッションに変化をもたらすことも可能という点でしょう。とりわけ非常にアクセントのきいた素材なので、あらゆるトレンドの上を行く。ジーンズはタフだし、まじりけのない「潔さ」があって、生活に寄り添うような素材ですしね。