オーダーメイドであればサイズ面での対応は可能だが、それでも自分の要望を的確に伝えるのは簡単ではない。特にリクルートスーツを探すときに苦労することが多いという。
そんな悩みにいち早く対応したのが、マルイだ。誰でもメンズ・レディスどちらのサイズも選択することができ、ビジネスシューズやパンプスも通常より幅広いサイズをラインナップ。
また、販売員に悩みを打ち明けながらスーツの採寸ができる、LGBTの向けの就活応援イベントなども開催している。かつて「赤文字系」など若者向けファッションの発信地だったマルイはなぜ、変化を遂げたのか。
丸井グループ代表取締役社長の青井浩に、自身もトランスジェンダーで、昨年15万人を動員した日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野が聞いた。
LGBTのためではなく、「全てのお客様」のため
杉山:オーダースーツもそうですが、丸井グループでは近年、「インクルージョン」をテーマに掲げた経営に取り組んでいますよね。「東京レインボーパレード2016」では、パレードに合わせてビジョンや、ショップごとに旗やバッジを出してくださっていて、感動しました。
僕が青井さんに初めてお会いしたのは2015年頃ですが、当時からLGBTを含むダイバーシティに強い関心を持たれていましたよね。
青井:その頃はちょうど経営難を脱して、未来に向けた新しい取り組みを始めた時期でした。社内の女性活躍推進が遅れていたこともあって、ダイバーシティの必要性を強く感じていたんです。
とはいえ、強調したいのは、LGBTの方のためだけに施策を打っているわけではないということです。我々の目標は「全ての人にお応えする」ことで、LGBTを特別視することではありません。その意味でも、ダイバーシティだけでなく「インクルージョン」の意識が大切です。
杉山:だとしても、マルイさんのような大企業でそうした舵取りをするのは大変なのではないでしょうか?
青井:当時、社員の約50%が女性で、顧客層も70%が女性だったのに、社内の意思決定層の女性はわずか7パーセント。会議ではおじさん同士がいつも同じ顔を突き合わせていて、これでは良いアイディアは生まれないと気付いたんです。
どうすればダイバーシティ&インクルージョンを実現できるかさっぱりわからなかったので、実際に成功例を持っている企業の会長さんに「我々もダイバーシティをやりたいので教えてください」と訪問するところからスタートしました。