「体が悲鳴をあげる座り方」から逃れるためのこっそり体操

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私はよく会社内を巡回して歩いているのですが、心を痛める光景を目にすることがよくあります。それは関節や筋肉が悲鳴をあげていそうな座り方をしている人を見たときです。大きく分けると、その悲鳴のケースは3つに分類されます。

ひとつは、極端な猫背で頭がパソコンに近づいている姿。もうひとつは、逆に背もたれを存分に使っていると思いきや、使い過ぎて頭がパソコンからだいぶ離れている姿。3つめとして、腰は右を向きながら頭は左を向いているようなひねりスタイルです。

どこの会社でもお馴染みの光景かと思いますが、長時間のデスクワーカーが多い会社ほど、その「3流派」は広まっていて、「師匠!」と呼びたくなるほどスタイルを極めた方に出会うこともしばしば。まるで、置物のように微動だにせず、生まれたときからその姿かたちだったのではないかと思うくらい、堂に入っていることもあります。

腰痛を未然に防ぐために

社員の健康をサポートする立場としては、悲鳴が聞こえてしまったからには、その人に声をかけて姿勢を整えてもらうか、それともさり気なく人体の骨格イラストなどを渡し、姿勢の大切さに気づいてもらうのがよいのか、あるいはその人が休憩に出た隙に、イスやモニターの高さなどデスク環境を適切に変えてしまうか……など、あれこれ思いを巡らせてしまいます。

実際には最初の手段を取っており、DeNAでは理学療法士による週1回の社内巡回の際、社員にさりげなく声をかけてもらうようにしています。

ところで、なぜ私には社員の体の悲鳴が聞こえてくるのかというと、以前社内で、「腰痛の人のためのセミナー」を開催したことがあるからです。参加者の約20人がまさに辛そうな座り方を続けていてる方々で、みなさんの腰痛による苦労話というのが、それはそれは大変な内容でした。

「腰が痛くて座れないので、打ち合わせ中に1人だけ立っている」とか、「歩くのが辛く、歩数も減っているうちに、体重が10キロ以上も増えていた」とか、「毎月給料の半分が腰の痛みを和らげるための整体やマッサージに消えていく」といった二次被害ともいえる声もあり、問題の大きさは想像以上でした。

つまり、私の脳には、「姿勢が良くないと、そのような危機的状況が起きる、または今後起きる可能性が高い」と強烈にインプットされたのです。おかげさまでと言うべきか、私は、それ以来、自分の姿勢が悪くなっていると感じたときは、脳がそのときの恐怖感をもとに緊急指令を出して、姿勢を整えようとする習慣が身につきました。
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文=平井孝幸

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