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ここ数十年間に行われた数多くの研究結果によれば、睡眠を取ることはぜいたくではない。脳は私たちが眠っている間も忙しく働き、主に脳自体にとって極めて重要な“ハウスキーピング”を行っている。睡眠は私たちの健康にとって、さまざまな意味で欠かせないものだ。

欧州心臓病学会誌(European Heart Journal)に先ごろ発表された新たな研究結果は、過去の研究と同様に、睡眠不足が健康リスクであることを指摘している。特に、心臓にとってのリスクであり、脳卒中を引き起こす危険性を高めるという。

一方、睡眠を取りすぎることも、良いことではないとされる。睡眠不足とは異なり、「睡眠過多」は健康にとってのリスク要因ではなく、すでに存在する問題の症状だと考えられる。

約12万人を追跡調査

発表された論文は、大規模コホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE、前向き都市地方疫学研究)」の参加者である21カ国の成人11万6000人以上に関するデータを、中国・北京協和医院とカナダ・マックマスター大学など各国の研究者らが分析、結果をまとめたものだ。

研究チームは参加者について平均8年間にわたる追跡調査を実施。生活習慣や家族健康歴などに関する質問への回答を得た。調査期間中に死亡した人は約4400人。(心臓発作や脳卒中など)心臓血管イベントを発症した人もほぼ同数だった。

分析の結果、睡眠不足は心臓血管疾患の健康リスクと死亡リスクに関連していることが確認された。リスクが最も低いのは、夜6~8時間眠っている人だった。睡眠時間が8~9時間になると、リスクはわずか(5%)ながら上昇した。9~10時間の睡眠を取っている人は17%、10時間以上眠っている人は40%、それぞれリスクが高まっていた。

昼寝の捉え方

一方、睡眠時間が6時間未満だった人のリスクは5%上昇していたが、これは統計学的に有意ではない。つまり、偶然だった可能性もある。

また、睡眠時間が6時間未満の人のリスクは、昼寝によってわずかに低下していた。論文の著者らは、これは代償機構(バックアップ)になっているとの見方を示している。

「こうした人たちの場合、昼寝は夜間の睡眠不足を補うものとなっており、リスクを低減させていると考えられる」

「ただし、夜間に十分な睡眠を取っている、または睡眠過多の人の場合には、昼寝と死亡または心血管疾患のリスクの上昇に関連性が見られた。睡眠が6時間未満の人では、そうした関連性は確認されていない」

睡眠に関する「適切」とは

研究チームは、睡眠時間は一般的に考えられているとおり6~8時間が適切だとしている。睡眠過多(例えば毎日9時間以上)の人は全般的な健康状態を調べ、原因を確認すべきだとしている。睡眠は食事や水分の摂取と同様に、大切な行動の一つと捉えることが重要だ。

睡眠不足は体にストレスを与え、炎症を引き起こし、それに伴う健康上の問題を招く可能性がある。つまり、それ自体が不調の原因となり得る。一方、睡眠過多はすでに存在する健康上の問題を示唆している可能性がある。

興味深いことに、先ごろ発表された別の研究結果によると、睡眠時間が短すぎる人は十分な睡眠を取っている人に比べ、怒りっぽいことが分かった。これは、驚くような結果ではない。過去の研究や私たちの大半の個人的な経験から、睡眠不足が気分に大きな影響を与えることが分かっている。

私たちは、機嫌が悪くなることを多忙な生活習慣を続ける上で必要な犠牲として受け入れてしまうのではなく、それ自体が長期的な健康のために改善すべき症状、または変えるべき習慣なのだと受け止めるべきかもしれない。

編集=木内涼子

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