I write about economic and social trends in China. @johannylander

(Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images)

テスラのように急速に売り高を伸ばしている企業が、7%の人員削減を行う理由はどこにあるのだろうか?その答えには、公式なものと非公式のものがある。

表向きの理由は、「モデル3」の生産コストを引き下げ、廉価版モデルの生産を開始し、大衆市場向けの手ごろな電気自動車(EV)を販売することだ。

マーケティングの専門家であるエベレット・M・ロジャースが「イノベーター理論」で示した普及曲線で説明されるように、価格を引き下げれば、テスラはより容易に「転換点」を超え、大衆市場に食い込むことができるはずだ。

ロジャースは新製品について、消費者がそれを「認識し、関心を持ち、評価し、試し、そして採用する」という複数の段階を経て普及していくものだと主張する。

新製品を採用するのは当初、小数の消費者グループである「イノベーター(革新者)」であり、製品の認知度が高まるペースは遅い。だが、別の少数の消費者グループであり、イノベーターと関わりがある「アーリーアダプター(初期採用者)」たちが製品を採用すると、普及は加速し始める。

これらのグループはどちらも、新製品に関する興奮と好奇心から購入を決める。そのため、価格には敏感ではない。

その後、初期採用者と「アーリーマジョリティ(前期追随者)」が引き起こす「カスケード(飛躍的な売上高の伸び)」によって、新製品の普及は「転換点」に達すると考えられる。そうなれば、その製品は商業的に成功したということにもなるだろう。

初期採用者と前期追随者のグループは、その新製品を他の類似の製品と比較した結果、より高い価値があると考えて購入を決定する。つまり、彼らは価格に敏感だ。要するに、新製品が大衆市場にリーチするための重大な要素は、価格だということになる。

理由はそれ以外にも

この法則は、テスラにも当てはまる。同社が生産コストの削減を図ることは、まさに道理にかなったことだ。そうすることで、価格を引き下げる余裕が生まれるからだ。ただし、筆者の考えでは、テスラの決定には「非公式の理由」がある。

テスラには多額の負債がある。インタレスト・カバレッジ・レシオ(EBITDAを支払利息で除して割り出す)から見れば、(昨年10月の時点では)同社が得た利益はほとんど、支払利息に消える状態にあったことが分かる。コストを減らすため、一部従業員の解雇を急がなくてはならない理由はここにある。

さらに、テスラは中国工場に多額の投資をしている。同社は昨年8月、50億ドル(約5480億円)規模の工場建設を発表しており、この計画のためにも資金を調達する必要がある。米国内でコストを削減しなくてはならないもう一つの理由だ。

コストを削減する代わりに、テスラは新株を発行することもできるだろう。だが、それは現在の株主たちにとって、株式の希薄化を意味する。

また、テスラはフォルクスワーゲンをはじめとする大手自動車メーカーとの競争にもさらされている。低価格帯のモデルの投入は、大衆車市場における競争に大きな影響を及ぼすだろう。

人員削減は、短期的には有効な方法だと考えられる。一方、長期的には悪影響をもたらす可能性もあるものだ。

編集=木内涼子

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