ビジネス

2018.12.17

動き出した「GovTech」 行政とテクノロジーの正しい掛け算

スタートアップ育成に力を入れる神戸市は米国ベンチャーキャピタルとのプログラムを実施

FinTech(金融)やEdTech(教育)といった「x Tech」という言葉の一つに、GovTech(ガブテック)がある。政府(Government)と技術(Technology)を組み合わせたもので、海外では2013年頃から用いられているが、日本では聞いたことがないという方がまだ多いのではないだろうか。

ガブテックは、他の「x Tech」と同じく、ICT化で単に業務効率を高めるだけではない。むしろ、これまでに存在しなかった新しいサービスを生み出せるかがポイントとなる。それゆえ、民間企業のオープンイノベーションがそうであるように、斬新なアイデアと機動力を持つスタートアップとの相性が良い。

確かに、行政はコスト意識が希薄で、新しいことに挑戦しにくい体質を持つので、簡単には進まない。ところが、スタートアップの育成に力を入れる神戸市で成功事例が生まれ、それを全国で共有しようとする取組みが動き始めた。

参加者を1.5倍にしたアプリ

神戸市長田区で、子育てイベントへの参加者を、前年比で44%増やしたウェブアプリが誕生した。イベントの内容は従来と変わらないのだが、ひと月に65回開かれているイベントの参加者が550人から800人に急増。2018年8月にリリースしたこのアプリは、4カ月の実証実験で成果を出した。

仕組みはとてもシンプルだ。これまで紙のチラシでしか知ることができなかったイベントを、スマホでも見つけられるようにした。例えば、自宅から半径500メートル以内で明日どのようなイベントがあるのかが、スマホですぐ判るのだ。

とはいえ、この手のサービスは、テクノロジーが優れていても使われることなく、いつの間にか姿を消すのが普通だ。なぜなら、子育て世代という特定の利用者が「サービスを知ること」自体が難しいからだ。

ところが、長田区役所によるマーケティングが、これを解決した。子育て世代は、生後4カ月や1歳半などの定期検診で区役所を訪問する。そのときにアプリの利用を呼び掛けた。その結果、呼び掛けた約4割がアプリを使用することになった。さらに、98%が継続利用を希望した。これはアプリ開発者から見ると、驚くべき数字だ。
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文=多名部重則

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