ガブテックは、他の「x Tech」と同じく、ICT化で単に業務効率を高めるだけではない。むしろ、これまでに存在しなかった新しいサービスを生み出せるかがポイントとなる。それゆえ、民間企業のオープンイノベーションがそうであるように、斬新なアイデアと機動力を持つスタートアップとの相性が良い。
確かに、行政はコスト意識が希薄で、新しいことに挑戦しにくい体質を持つので、簡単には進まない。ところが、スタートアップの育成に力を入れる神戸市で成功事例が生まれ、それを全国で共有しようとする取組みが動き始めた。
参加者を1.5倍にしたアプリ
神戸市長田区で、子育てイベントへの参加者を、前年比で44%増やしたウェブアプリが誕生した。イベントの内容は従来と変わらないのだが、ひと月に65回開かれているイベントの参加者が550人から800人に急増。2018年8月にリリースしたこのアプリは、4カ月の実証実験で成果を出した。
仕組みはとてもシンプルだ。これまで紙のチラシでしか知ることができなかったイベントを、スマホでも見つけられるようにした。例えば、自宅から半径500メートル以内で明日どのようなイベントがあるのかが、スマホですぐ判るのだ。
とはいえ、この手のサービスは、テクノロジーが優れていても使われることなく、いつの間にか姿を消すのが普通だ。なぜなら、子育て世代という特定の利用者が「サービスを知ること」自体が難しいからだ。
ところが、長田区役所によるマーケティングが、これを解決した。子育て世代は、生後4カ月や1歳半などの定期検診で区役所を訪問する。そのときにアプリの利用を呼び掛けた。その結果、呼び掛けた約4割がアプリを使用することになった。さらに、98%が継続利用を希望した。これはアプリ開発者から見ると、驚くべき数字だ。