従来重視されてきた四半期決算やアニュアルレポート等の財務情報よりも、企業の将来性やリスクマネジメント能力を測るため、過去軽視されてきた情報から意味のあるデータを分析しにいく。実際その手法は、過去の10年間でベンチマークを上回る投資パフォーマンスが確認されてきており、日本にも2年ほど前に上陸した。それが「ESG投資」だ。
ESG投資は社会貢献ではない
だが、ESG投資は、誤解や誤認が非常に多い分野でもある。ESGは、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)を指すことは徐々に知られてきたが、いまだに「社会貢献投資」と日本語訳されたりもしている。これは酷い誤訳だ。ESGのことを、慈善活動や寄付、高邁な倫理感をイメージしやすい「CSR」と同じと捉えている人も少なくない。これも大きな誤解だ。
上場企業の経営者が、ESG投資のことを社会貢献投資やCSR投資のように勘違いして、海外株主と対面したらきっと恥ずかしい思いをする。投資家側でも、このような誤解に基づいたESG投資をしていたら、十中八九投資パフォーマンスは上がらない。ESG投資には、大きな誤解や誤認が蔓延しており、せっかくのチャンスを活かせない人が非常に多くいる。
世界の大手がこぞってESG投資に転換
では逆に、このチャンスをうまく活かしているのは一体誰なのか。それを知るには、実践者である「ESG投資家」と呼ばれる人が誰かを見てみるとよい。ESG投資家は、倫理意識が崇高な風変わりな投資家でもなんでもなく、普通の大手の投資会社だ。
日本でもおなじみの投資銀行ゴールドマン・サックスの運用子会社ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントもESG投資を始めているし、世界最大手の運用会社であるブラックロックやバンガードはその最前線にいる。
富裕層の資金を運用するプライベートバンク大手のUBSやクレディ・スイスも、早くからESG投資に活路を見出している。最近では、欧米のヘッジファンドですらESG投資に関心を寄せている。
なぜ、ESG投資によって中長期的に高いリターンが得られるのか。これを理解するには、おそらく日本人は頭の中を180度ひっくり返す必要があるかもしれない。
前述した欧米の金融機関が強く認識していることは、20世紀型ビジネスと21世紀型ビジネスは大きく様変わりしたという事実。根底にあるものは「メガトレンドがもたらす巨大なリスクや新たな機会」だ。