このサービス「ウォルマートTo Go」は、「WeChat(ウィーチャット)」のアプリ内ミニプログラムから利用が可能だ。ウォルマートはこれまでも、WeChatの親会社テンセントと、中国の消費者を対象にした決済やマーケティング、通信部門で提携を結んでいる。
テッククランチは次のように報じている。「ウォルマートはまだ、食品の即日配達サービスについて正式に発表していない。サービスは試験中で、顧客からフィードバックを集めている段階だ。しかし、サービスを提供しているウォルマートの店舗には、即日配達が利用可能である旨の案内が掲示されている」
今のところ、食品の即日配達が利用できるのは、深セン市にあるウォルマート香蜜湖(こうみつこ)駅店のみ。利用者は、WeChat内のミニプログラムから店舗にアクセスし、在庫を確認する。注文すると、通常は1時間程度で商品が配達されるようだ。
テッククランチは、以下のように説明している。「ウォルマートTo Goは、同社のオムニチャンネル戦略のひとつだ。顧客別にカスタマイズされたショッピング体験を提供することに注力しており、個別にお勧め商品を紹介したり、クーポンを発行したりなどしている。同社広報は、ウォルマートTo GoはWeChatのミニプログラムを通じてショッピングサービスを提供する新たなチャンネルだと話している」
ウォルマートはWeChat以外にも、中国のeコマース「JD.com」(京東商城)とすでに提携しており、「Dada-JD Daojia」(達達-京東到家)という、食品のオンライン販売と配送を行う合弁事業に5億ドルを投資している。Dada-JD Daojiaも香蜜湖駅店から食品を配達するが、ウォルマートTo Goはそれとは別に運営される。
中国での消費者リーチ拡大を目指して現地企業と手を結ぶアメリカ企業は、ウォルマートだけではない。スターバックスはアリババと提携してコーヒーのデリバリーに乗り出している。大手スーパーのクローガーも、中国での販売にあたってアリババと提携した。
アメリカの小売企業は、アジアにおいて自力で地位を確保するのに苦戦しており、その多くが近年、地元の大手企業と手を結ぶようになっている。
中国の小売業界では、大手のJD.comとアリババが成長を続け、しのぎを削っている。アメリカの企業は二手に分かれるようで、ウォルマートがJD.comと組む一方、スターバックスとクローガーはアリババについた。JD.comとアリババはともに食品と日用品販売に大きな関心を寄せつつあり、アメリカ企業と手を組むのは自然な流れだ。
CNBCは、以下のように報じている。「アリババとJD.comの競争は、中国ではそのダーティーさで悪名高く、『猫と犬の大戦争』と呼ばれている(アリババは「天猫(T-Mall)」の黒猫、JD.comは白い犬をマスコットにしている)。中国企業のオンライン販売海外展開を支援するコンサルタントのWang Hongboも、2社による戦争の影響を、各社が受けていると語っている」
JD.comとアリババの戦いで、いずれか一方につくことには大きな影響が伴う。いったん片方の企業と手を結べば、他方からはライバル視されると考えたほうがいい。それでもウォルマートは決断を下したということだ。