EUの立場からは、単なる予算会計や経済成長予測の問題以外の理由が背景にあるはずだ。と言うのも、欧州委員会はこれまで、ドイツ、フランス、スペインが規定以上の赤字を抱えることを許容してきた。今回イタリアにこれほど厳格な態度を取った理由として、同国の債務が既に高い水準にあることを指摘する経済学者もいる。現在イタリアが抱える負債はGDPの130%近くに上り、ギリシャの180%を除けばEU加盟国で最高となっている。
しかし、この高い債務負担は長年存在しており、EUは歴代イタリア政権にGDPの3%を超える赤字を許してきた。こうした事実を考えると、少し異色ではあるものの適切に選出された現伊政府の国家予算案を拒否する根拠としては、赤字がGDPの3%を超えることだけでは不十分だ。
おそらく、現政府の反抗的な態度と関係があるのではないだろうか。欧州委員会は予算案を拒否しただけではなく、イタリアに対する制裁手続きを推進するというほぼ前代未聞の措置を講じている。
このような流れに至ったEU指導部の動機が何であれ、EUは伊政府の術中にはまってしまった。連立を組む2党は選挙運動で、観点は全く異なるものの、いずれも反EUの立場を取ってきた。この立場こそ、2党が持つ唯一の共通点かもしれない。同盟はビジネスのため、M5Sはポピュリズムの観点から、EU離脱は無理としてもユーロ圏からの離脱、または最低でもEUから課せられる規則の緩和を実現させたいと考えている。
イタリアでEUに満足している人の割合は44%と、加盟国の平均(66%)よりも低いが、それでも伊政府は反EU政策への支持を集める必要がある。今回のEUによる典型的に不器用なアプローチは、このニーズに合致したようだ。ディマイオは、欧州委員会が予算案を拒否するとすぐに、イタリア国民に対し「EUがまずイタリアにもたらした損害(緊縮予算)を考えると、EUの政策に従い続けることはどうしてもできなかった」と語り、「私たちは常にイタリア国民を優先する」と表明。サルビーニもこれに同調した。