EUと伊政府の対立は、表向きには同国の2019年度予算案に関するものだ。発足して間もない伊連立政権は、2つの党がそれぞれ掲げた公約の実現に向け、政府の支出を2.7%増やすことを望んでいる。
ルイジ・ディマイオ率いる左派寄りのポピュリスト(大衆迎合主義)政党「五つ星運動(M5S)」は、貧困層のためのユニバーサル・ベーシックインカム(UBI/最低所得保障制度)の導入を公約。マッテオ・サルビーニ率いる新ビジネス・国家主義系の政党「同盟」は減税を約束していた。
これら政策の方向性は首尾一貫しておらず、この与党連合の異様さを表しているが、欧州委員会がイタリアの予算案に反対している理由はこれではない。EU加盟国は、国内総生産(GDP)の3.0%を超える赤字を出すことを禁じられており、EUは伊政府の予算案がこの規定に違反すると主張している。一方の伊政府は、2019年の赤字はGDPの2.4%になると反論したが、EUはこの成長予測を楽観的過ぎると否定している。
この論争の実状は、より複雑だ。イタリアにとって、予算は政治・経済面での強力なメッセージを持つ。連立を組む2党は選挙公約を実現したいだけではなく、イタリア経済には長年にわたりEUが課してきた緊縮財政ではない何かが必要だと考えているのだ。
伊政府は、総労働人口の10%に迫る失業率や、30%を超える若者の失業率、そして資本投資の不足や、それが国内産業の生産性向上や競争力に与える脅威について、元凶は過去の緊縮政策にあると非難している。
しかし新政権はそれ以上に、歴代政権とは違いEUの要求にはただ従わないことを示したがっている。サルビーニは過去の政権をEUの「操り人形」と批判。またディマイオは、EUの予算拒否について「これはイタリアの予算の中で、初めてEUが気に入らなかったものだ。私は驚かない。ブリュッセルではなくローマで作られた初めてのイタリア予算なのだから」と述べた。