今回、開発されたDeep Viewは、人間の関節の動きなど、対象の繊細な行動まで検知・分析することができるよう作り込まれた。韓国電子通信研究院は、Deep Viewに関してさまざまな応用を考えているが、まずはデータやプロジェクトの連携が取りやすい地方自治体と協力。需要が多かった不法投棄に特化したAI監視カメラシステムを構築することにしたという。
カメラが設置された場所で、人が特定の場所にモノを投げ入れたり、そっと置くなどすると、Deep Viewが行為を識別する。興味深いのは、ただモノを置いただけなのか、完全に捨てたのかなどに関しても、ディープラーニングを用いた認識技術で判別することができるようになっているという点である。
なお、このAI監視カメラシステムの目的は、不法投棄を行う人々の摘発ではなくて、あくまでその前段階である「抑止」に焦点が絞られている。例えば、誰かがゴミを不法投棄するとカメラから「カシャ」という撮影音ともに、「写真が撮影されました。捨てたごみを持っていかなければ関連法に基づき処罰されます」という警告メッセージが発せられるといった具合だ。
韓国電子通信研究院側も、カメラが行動を一部始終にわたり判断しているとの認識が広がれば、不法投棄を減らすことができると開発経緯を説明している。今後、Deep View は店舗における顧客の行動分析、橋からの投身自殺の検出、工場労働者の危険行動に対するアラートなどに活用できる技術としてブラッシュアップされていく予定だという。
11月22日、日本では約2トンのゴミが不法投棄された金華山(宮城県石巻市)の産業廃棄物不法投棄事件で宗教法人「金華山黄金山神社」が書類送検されている。韓国で開発されたAI監視カメラシステムは主に都市部での不法投棄を念頭に置いたものだが、仮に日本でも同様のシステムが登場する場合、山中など人間の目が行き届かない場所での不法投棄にも応用できるかが効果を計る上で重要な尺度となってきそうだ。
また、AI監視カメラによる不法投棄検知は社会的に有用なアイデアではあるものの、人物の行動が検知するため、プライバシー保護の観点からも議論が必要となるはずである。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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