今回、トヨタ自動車は、IBMの人工知能「ワトソン」が生み出したシナリオを使ってレクサスの広告を作成。11月中旬に公開した。
監督を務めたのは、アカデミー賞を受賞した経験を持つケヴィン・マクドナルド氏だ。
トヨタはIBMと協力し、過去15年の間にカンヌ広告祭で賞を受賞したトヨタ自動車のキャンペーン映像、シナリオ、音声などを収集。ワトソンを使って「情緒的に知的でありながらも、楽しさ与える要素」などを割り出した。次いでAIが台本の流れおよびプロットを提示し、人間の専門家らがストーリーをブラッシュアップさせる形でシナリオを完成させた。いわば、人工知能と人間が協業して、新しい創作物を生み出したということになる。
広告のストーリーは衝突事故(テスト)が起こるかもしれない決定的な瞬間に、車体に内蔵された自動緊急ブレーキシステムが作動して難を逃れるというもの。実際に見ていただければお分かりになると思うが、車体を見守るエンジニアや、レクサスそのものに思わず感情移入してしまうシーンがある。
「ここ数年、人工知能は世界的に注目を浴びていますが、そのユースケースのほとんどすべてが効率化やコストカットに焦点を向けられています。今後、人と協業して新たな価値を生む人工知能が登場してこそ、本当の意味で人工知能の時代と言えるかもしれません」(日本の学界関係者)
まだまだ実験段階とはいえ、大手企業の広告を生み出す作業に人工知能が取り入れられたことは、「人工知能の使い方」の転換点を象徴するものになるかもしれない。今後、製品開発や経営方針の決定など、より大きな意味合いでのクリエイティブにAIが使われていくことが増えていく可能性もある。同動画広告はまだ、TVのCMとして放映される予定はないそうだが、一部、制作ストーリーなどは順次公開される予定だとされている。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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