コンテンツ、アプローチ、空間をボーダレスに
──最後に、3年後や5年後にやってみたい事業、実現したいことがあれば教えてください。
会社のミッションでもあるのですが、「学びをボーダレスにする」ことを追求していきたいです。
私が思う「ボーダレス」には3つの意味合いがあります。ひとつめは、「学ぶ内容をボーダレスにする」こと。
──学ぶ内容?
今「大人が学ぶもの」と思われている人権問題や国際情勢、お金の教養というのは、実は子どもが学んでも全然おかしくないこと。むしろ、子どものうちから考えておくことで判断軸が増えていくと考えています。なので、そういった「大人」「子ども」といった年齢の境目をなくし、子どもたちが学ぶ内容の幅をどんどん広げていきたい。
次に「アプローチ」に関して。従来型の学び方は「算数・国語・理科」というように、教科ごとに学びが分断されています。でも、実は私たちは、ひとつの物事・現象からすごくいろんなことが学べると思っています。
たとえば今、子どもたちがスクールで学んでいるのは「冷戦とパラダイムシフト」というテーマです。そのひとつのテーマから、「ベルリンの壁の崩壊」という「歴史」を学べたり、BRICSの成長率の統計グラフを使って「算数」的な要素に触れたり、アメリカの冷戦に対する考え方を知ることで「政治」に触れられたり…… 実は、一つの事象でさまざまなことを包括的に学べるんです。もちろん難しいトピックなので、子ども向けに分かりやすく噛み砕いて教えています。
──なるほど。「内容」と「アプローチ」のボーダレス。もうひとつは何なのでしょう?
もうひとつは、「空間」をボーダレスにしていきたいです。今は物理的な「教室」という空間の中にいるクラスメイトとしか学び合うことはできませんが、テクノロジーを使って、多拠点の教室・子どもたちが繋がり、世界中にクラスメイトがいるような学習環境を作りたいと考えています。
たとえば、AR、VRのアプリケーションを開発し、右側にはベトナム人の子が、左側には台湾人の子が、前にはインドの子がいて一緒に授業を受け、ディスカッションできるような環境を作りたい。そんな教室が作れたら、子どもたちの学び方はもっと多様になるし、本当の意味でのダイバーシティが加速されるんじゃないかなと思っています。
「内容とアプローチ」のボーダレス化は、現在のスクールで少しずつ形が見え始めているので、これからの5年間は物理的なクラス空間を超えていくことに挑戦していきたいです。今のスクールの延長線上には、テクノロジーが活用され、子どもたちの学びの境界線が無くなった未来があると思うと、とってもワクワクします!
これからも、子どもたちの学びをボーダレスにすることで、人生の選択肢を増やしていける人を増やしていきたいです。
ひぐち・あき◎1989年生まれ。高校卒業後に単身で北京に渡り、北京大学へ入学、同大学国際関係学部卒業。リクルートホールディングス、リクルートキャリアを経て、Selan代表取締役就任。バイリンガル教育事業「お迎えシスター」、生きる力をつけるウィークエンドスクール「dot.school」を展開。2018年、世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加。