そのヒントを探るべく、日本酒蔵の多様性を引き継ぐことを目的に事業展開を進めるナオライのメンバーが、これからの社会を創るキーパーソン、称して「醸し人」に迫ります。
第1回は、2014年度に過去最高益と売り上げ3兆円を達成し、量から質的成長に舵を切りながら、地域の風土や伝統を重んじた経営を遂行するマツダ代表取締役副社長 藤原清志さん。
日本企業は「地域」と共に成長を遂げてきた
三宅:この企画では、目には見えない本質を追求し続ける経営者の方へインタビューをさせて頂きたいと考えており、その時真っ先に頭に浮かんだのが、藤原副社長でした。
藤原:硬い。藤原さんでいいから(笑)
三宅:では、藤原さん。われわれ日本酒業界は、急速に進む産業化やグローバル経済の渦の中、廃業する酒蔵が増えるなど大きな課題に直面しています。そして最近、その理由は、自然や菌の恩恵を受ける製法や地元との繋がり等、「日本酒本来の価値」が埋もれてしまっていることではないかと考えています。マツダさんは今の社会で、どんな課題をどのように捉えていますか?
藤原:小さくても地元で、個性的な酒造りをしていれば生き残っていける酒蔵は沢山あると思う。酒蔵からは、地元を大事にしていることがよく伝わるから。マツダもそんな感じで、マツダにとっての地元は広島、ひいては日本だと捉えてすごく大事にしている。これからの時代はそうなるんじゃないかな。
三宅:例えば、どんなことを意識されているのですか?
藤原:日本は、地域の持つ文化や風土が、モノづくりにおいて非常に大切にされるじゃないですか。それは、日本古来の農耕文化に由来するものだと思うわけです。土地を耕すからこそ、その地を大切にするという意識が強い。それって恐らく酒造りも一緒で、その蔵に住む菌で仕込むからこそ、特徴のあるお酒が造れるわけでしょう。
日本は昔から地域と共につくり、そこで生まれた経済は還元され、皆で成長してきた。だから100年以上続く企業が世界で一番多いことにも納得ができる。その文化は大事にしなければいけないんじゃないかな。
三宅:そうですね。それが今、世の中があまりにも経済至上主義になってしまっている気がします。
藤原:大きな企業は株主資本主義でも良いんじゃないですか。しかし、我々のような小さな組織で生きていこうとすると、社会のコミュニティ、そしてそこに住む人たちと共存共栄できる資本主義でないといけないと思うんですよ。
三宅:株主資本主義ではないけど、株式会社であるという。その絶妙なバランスがすごい。
藤原:株主資本主義でもなく、社会主義でもない。その間の公益資本主義がマツダの在り方であり、これからの時代だと思うんです。でも競争力を上げる必要があることは事実です。つまり、いかにして特徴のあるものを生み出し、それを皆に共有するかということです。