死角モニタリング、前方衝突警告、緊急自動ブレーキ、車線逸脱警告などの安全性技術は標準となりつつあるが、その機能に関する誤解は、誤用や過度の依存、運転手の注意散漫などの危険行動を誘発しかねず、死亡事故に発展する可能性もある。
非営利団体「AAA交通安全財」は9月、「Vehicle Owners’ Experiences with and Reactions to Advanced Driver Assistance Systems(先進運転支援システムに対する自動車所有者の経験と反応)」と題した調査報告書を発表した。AAAのデービッド・ヤン常任理事は発表で「ADAS技術を適切に使用すれば、車の全衝突事故のうち40%を防止し、交通事故の死亡者を30%近く減らすことができる可能性がある」と述べている。
同団体の調査では、ADAS技術が全車両に搭載されれば、米国では毎年270万件以上の衝突事故を防ぎ、負傷者数は約110万人、死亡者数は約9500人をそれぞれ減らせる可能性が示された。
「しかし、こうしたシステムの安全性効果を最大化するには、運転手の理解と適切な使用が欠かせない」とヤン。「今回の新調査での結果は、ADAS技術の適切な使用法とその限界について運転手を教育するため、まだ多くの取り組みが必要なことを示している」
AAAは、アイオワ大学の研究チームに委託し、ADAS技術の搭載された2016年・17年モデルの自動車を最近購入した運転手を対象とした調査を実施。以下はその主な結果だ。
・死角モニタリングシステムを使う運転手の約80%は、その限界に気づいておらず、車両の後方道路を正しくモニタリングできる、あるいは自転車や歩行者、高速で追い越す車まできちんと検知できると誤解していた。報告書は「同技術は現実として、運転手の死角を進む車しか検知できない。また多くのシステムは、歩行者や自転車を確実に検知できない」としている。
・ほぼ40%の運転手が、前方車両衝突警告と自動緊急ブレーキシステムの限界を知らなかったり、両システムを混同したりしていた。両者を混同していた人々は、前方車両衝突警告では緊急時に警告を出すことしかできないにもかかわらず、この機能には自動ブレーキも含まれると思い込んでいた。
・死角モニタリング、あるいは後退時車両検知警報システムを使っている運転者の約25%が、システムのみに頼って目視をせず、近づいてくる車や歩行者がいないか肩越しに確認しなくても大丈夫だと考えていた。
・前方衝突警告、あるいは車線逸脱警告を使う運転者の約25%が、運転中に他の作業をしても大丈夫だと感じていた。
・緊急自動ブレーキシステムを搭載した車の所有者の33%が、同システムが必要とするカメラやセンサーが泥や氷、雪でふさがれる場合があることを知らなかった。