海底火山にクジラたちが集まる理由、豪研究チームが報告

Chase Dekker / shutterstock.com

新たに発見された海底火山で構成されるロスト・ワールド(失われた世界)には、様々な海洋生物が集まっている──。タスマニアから東に約400キロの海底に、海山列があることが、オーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO) の船舶「Investigator」による調査で明らかになった。

海山の高さは海底から最大3000メートルだが、最も高い山でも山頂から海面までは2000メートルもあるほどの深海に位置する。

「マルチビーム・マッピングによる調査で、深さ5000メートルの深海平原の海山列の存在が浮かびあがった」と、マッピングチームを率いるタラ・マーティン(Tara Martin)博士は声明の中で述べた。

「発見された海山は大きさや形が多岐にわたり、山頂が尖っているものや古代の火山活動によってできた円錐丘が点在しているものもある。精密な地図を作製することは、唯一無二の海洋環境を知るうえで、今後の研究の足掛かりにもなる」

海底火山には海洋生物が豊富に生息しており、今回発見された場所でも植物プランクトンが活発に活動していることが明らかになっている。さらに、通常は海面付近で暮らしている生物にもたびたび遭遇したという。

「海山列の上を航行している際、数多くのザトウクジラやヒレナガゴンドウに出会った」と、海鳥や海洋哺乳類に関する調査を行った「BirdLife Tasmania」のEric Woehler博士は語る。

「1日で少なくとも28頭のザトウクジラが現れ、続いて60~80頭にもおよぶヒレナガゴンドウの群も現れた。他にもかなりの数の海鳥がいて、その中には4種類のアホウドリや4種類のウミツバメもいた」

「これらの海山は周辺の海中でもその上に位置する海面付近においても生命を育む生物のホットスポットであることは明らかだ」とも述べた。

クジラのように移動しながら生息する生物は、海底火山を生きるために不可欠な中継地として使っている可能性があることを、今回の研究は示している。

「冬を過ごす場所から夏を過ごす場所へ、海中ハイウェイを移動するザトウクジラにとって、海山は重要な道しるべとなっている可能性がる」とWoehler博士は言う。

「幸運なことに我々はその海洋生物の海中ハイウェイの真上で調査を行っていたようだ」

Investigatorはさらに2つの研究のため11月と12月に同じ場所に戻り、海山の成り立ちなどの研究を進める予定だ。

編集=上田裕資

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