なぜNYだったのか? 日本発「幻のワイン」イベントの全貌

9月下旬、NYの三ッ星レストランで「Chateau WAIMARAMA(シャトーワイマラマ)」の新作はお披露目となった。

若者のアルコール離れが叫ばれる中、日本のワイン消費量は4年連続過去最高を記録している。

各ワインメーカーが輸入元や価格、造り方、販売にこだわりを見せる中、まったく独自の方法でブランドを創りあげているのが「Chateau WAIMARAMA(シャトーワイマラマ)」だ。

ニュージーランド産ワインであるにも関わらず、新作発表の初のイベントの場所はニューヨーク。ニューヨークに何か縁があるのかといえばそうではなく、オーナーは日本人だ。このワインブランドの狙いを探りに、9月に開催されたパーティに出席した。


観光客で賑わうタイムズスクエアから北西へ17ブロック。目の前にセントラルパークを臨むコロンバスサークルの三ッ星レストラン「Per Se(パーセ)」でワイマラマの初めてのイベント「20 year celebration of Chateau Waimarama by Sato family」は行われた。

レストランに集まったのは、ブルームバーグやニューヨーク・タイムズをはじめとするNYのベテランジャーナリストたち。ドレスアップした約60名のプレス関係者がそれぞれテーブル席につき、19時にディナーが始まった。

提供されたワインは、「Minagiwa 2016」「Minagiwa 2009」「Kiraraka 2009」「SSS 2009」「Cabernet Sauvignon 1998」、5種の赤ワイン。

中でも目玉の「SSS 2009(エスエスエス 2009)」は今回のイベントで初のお披露目となった。

「Sato’S Special」の略で「SSS」。シャトー・ワイマラマのオーナーであり、「エイブル&パートナーズ」代表の佐藤 茂がセレクトしたブドウから造られた文字通りスペシャルな1本だ。


ワイマラマのブドウ畑は4.5ヘクタール。剪定、収穫までが全て手作業で行われる。

ワイナリーが密集する地としてその名を知られるニュージーランドのホークス・ベイは、温暖な北島。「SSS 2009」はここで太陽をたっぷり浴びて育ったカベルネ・ソーヴィニヨンを100%使用した。

16ヵ月のオーク樽熟成を経た6樽、1768本のうち240本が11月から販売されることになる。注文方法は、ワイマラマ ジャパンへの直通メールとFAX、電話のみ。価格は1本5万円(税抜)と、ニュージーランドワインの最高価格帯となる。

「赤ワインとロゼしか造らない。フランス人である僕を醸造コンサルタントとしてチームに招き入れる。こんなにワイン造りにこだわるワイナリーのオーナーとはなかなか出会えません」

同じテーブルに着いたワイン・コンサルタントのルドヴィック・ヴァネロンがディナーの最中に教えてくれた。

連載:ニュージーランドワインの固定概念を覆す最高級クラスのワイン、「WAIMARAMA」

シャトー・ワイマラマでも、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランを栽培することはできる。しかし、「白ワインも造ることはできるが、まずがこの地に昔からなる品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラーにこだわり抜いて、世界最高峰を目指せるワインを造りたい。白ワインはその後に」という佐藤の譲れない条件があったという。

フランスの名門シャトーの総責任者を経て、2011年から醸造コンサルタントであるルドヴィックは、この考えに共感した。

「このイベントのメニューにもかなりこだわっているんですよ。シェフと何度も打ち合わせを繰り返して今日を迎えました」

向かいの席からこう声をかけてきたのは、大手ファインワインインポーターのバイヤーを経て、2018年からワイマラマのグローバル・ブランディング・オフィサーを務める大岩由紀夫だ。


「Minagiwa 2009」に合わせて提供されたのは、ジュニパーベリー、コリアンダー、黒胡椒をまとわせたパストラミに仕上げフォアグラ料理。

ラグジュアリーワインの新作発表会を、今回の会場となった「Per Se」ですることは過去にもあった。ただ、ここまでワインメーカー側が提供するワインと料理のペアリングにこだわり、レストランと打ち合わせを重ねることはなかなかないという。

ディナーの最後には、1998年に造られ、20年熟成された、「SSS2009」と同じくカベルネ・ソーヴィニヨン85%、カベルネ・フラン10%、メルロー5%ブレンドのダブルマグナムがデキャンタージュでサーブされた。

20年前の1998年は佐藤の父がシャトー・ワイマラマのオーナーとなった年。2011年から佐藤茂が経営を引き継ぎ、土壌の改良や苗木の植え替えを行い、ワイン品質向上に力を注いできた。

2015年にはリネーミングも実施したが、その際公には発表をしなかった。これまでは、ほとんどオーナーの友人知人、ビジネス界の関係者に譲るという形でワイマラマのワインは市場に出ていたのだ。

最高級ライン「SSS」はまさに満を持しての発表となった。

ニュージーランド人の造り手、フランス人のコンサルタント、そして日本人オーナーという3カ国のキーマンによって造られたワイマラマのワインを、NYの第一線で活躍するジャーナリストたちはどう評価するか。その評価は今後どのようなインパクトを生み出すか。

佐藤の父がワイナリー経営をスタートさせて20周年という節目のイベント。現オーナーでありこだわりの強い佐藤が自身のワイナリーの実力を試すためには、初のイベント開催地は世界の流行発信地、NYでなければならなかったのだ。



「SSS 2009(エスエスエス 2009)」 750ml 50,000円(税抜)。購入は以下電話番号、WEBサイトからのみ受付中。240本限定。

ワイマラマ ジャパン/ 03-6447-2356
Email: office@waimarama-japan.jp



連載「日本人オーナーが目指す世界最高峰のニュージーランドワイン」
#1:本記事| なぜNYだったのか?日本発「幻のワイン」イベントの全貌
#2:公開中| ワインを知り尽くした先に辿り着いた一つのブランド
#3:公開中| 初リリースを迎えた、ニュージーランドワインの最高峰 Chateau WAIMARAMA SSS 2009
#4:公開中| 佐藤可士和が挑む「ワイマラマ」のブランディング
#5:公開中|「畑がワインの味を決める」ニュージーランドでワインジャーナリストは何を感じたか
#6:公開中|「日本発ワイン×鮨」が仕掛ける、世界の美食家たちへの挑戦
#7:公開中|佐藤可士和が手がける アートとしてのワインエチケット
#8:公開中|小山薫堂が提案 京都の老舗料亭でしか味わえないスペシャルなペアリング
#9:公開中|世界の偉大なワインには、共通項がある 日本人オーナーが仕掛けるふたつのヴィンテージワイン

文=Forbes JAPAN 編集部

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