そんな中、中国企業が米国の大学を買収する動きが広まっている。今年3月に「ブルームバーグ」は、2015年以来、少なくとも4つの米国の大学が中国に買収されたと伝えた。中国企業は既に、ボストンのBay State CollegeやニューヨークのDowling College、ニューハンプシャーのDaniel Webster College、ニューイングランドのChester Collegeなどを買収している。
ただし、ニュージャージーのWestminster Choir Collegeの買収話は現在、保留状態になっている。
米国の大学関係者の間からは、反発の声もあがっている。彼らは大学が中国政府の支配下に入ることを危惧している。Westminster Choir Collegeの買収提案においては、買収を阻止するための訴訟も持ち上がった。
この訴訟の担当弁護士のBruce Afranは「中国政府が支配する企業が、米国の大学を買収することは、学問の自由を脅かすことにつながる」と述べた。しかし、買い手である中国企業側のLarry Livingstonは、このような申し立ては合理性を欠いていると主張する。
「今後、Westminsterの運営に当たろうとしている組織は米国の法や規制に沿った運営を行おうとしている。学問の自由は完全に守られる」と彼は述べた。買収の完了を目指す北京の企業、Kaiwen Education Technology Companyは、Westminsterの運営を完全に米国のルールに沿った形で行っていくと宣言している。
しかし、既に中国に買収された大学の中には、不穏な動きが見られるものもある。昨年12月に中国資本の企業に250万ドルで買収された、St. Paul’s Collegeの今後に関し、地元の議員らは不安を抱いているという。
また、同じく中国資本に買収されたニューハンプシャーのDaniel Webster Collegeの場合は、買収から1年近くが経ってもキャンパスは空っぽのままになっている。
一方で、2015年に買収されたChester Collegeは、Busche Academyという名前の中国の寄宿舎学校として再生された。
米国の教育業界と中国との橋渡し役を務めるコンサルタントのHamilton Greggは、「寄宿舎学校に対する中国人の需要は高まっている。中国人の親たちは子供たちを、なんとしてでも米国で学ばせたいと思っている」とボストン・グローブの取材に応えた。
中国企業による米国の大学の買収は、今後も続いていくと述べる専門家もいる。教育コンサルタントのKent John Chabotarはブルームバーグの記事で「経営難に陥った大学としては、買収が唯一の生き残るための道なのだ」と述べた。