中国が“世界帝国”になるために、アフリカは役に立つだろう。だが、中国社会がこの地域のおかげで豊かになることはない。
それでも中国は、アフリカのあらゆる場所に進出している。アフリカ北部と西部を中心に、年に4~5回は同地域を訪れるという仏グルノーブル経営学院のジャン・フランソワ・フィオリーナ副学長は、次のように語っている。
「10年ほど前には、中国人の姿を見ることはほとんどなかった。だが、昨年マダガスカルに行ったときには、空港で搭乗手続きをしていた人の半数以上が中国人だった。みな帰国するところだった」
そして、そうした中国人たちがアフリカを訪れていた目的が観光ではないことは、明らかだという。彼らは経済戦争に駆り出された“兵士”だというのだ。
「中国は世界的な視野を持っている。グローバルに考え、ローカルに行動する。アフリカに3000社以上の中国企業が進出している理由はそこにある」
フィオリーナの推計は、非常に控えめだ。コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが昨年6月に公表した調査結果によれば、アフリカにある中国企業は1万社を超えている。
中国企業はアフリカで、何をしているのだろうか?フィリーナによれば、彼らはビジネスに関してアフリカから、以下の4つ利益を得ている。
1. 原材料サプライヤーの確保:そのためアンゴラやコンゴ民主共和国に投資
2. 海路の確保(巨大経済圏構想「一帯一路」の下で、中国からの輸出を拡大できる):そのためジブチに軍事基地を設置
3. 進出の推進:中国では今後、製造原価が上昇することから、占領して軍事的に制圧できる新たな場所を見つける必要がある。エチオピアで起きている経済の奇跡は、中国のこの行動によって引き起こされている
4. 米国・中南米への再輸出の拠点構築:そのためモロッコに投資
だが、アフリカは世界帝国になるという中国の野望を助ける一方で、中国の「技術的成熟」と「高度大衆消費の実現」を助けるものではない。これらを実現するためには、中国は国内における信用供与のバランスを見直さなくてはならない。米国やその他の先進国と同様に、国営企業ではなく民間企業に資金を供給する必要がある。
ただし、それは口で言うほど簡単にできることではない。中国では信用供与は国有銀行によって管理されており、主な信用供与の対象は、中央・地方政府の指導部の“とりで”である国有企業(SOE)と郷鎮企業(TVE)だ。
中国政府がこれに関する方針を変更する用意があるかどうかは不明だが、明らかなことが一つある。アフリカのおかげで中国の消費者が近い将来、米国の消費者と肩を並べるまでになるということはない。