そのCSVを推進するにあたっては、経済的合理性だけではなく、社会や地球環境への配慮が必要不可欠なため、利己ではなく利他=慈悲の心をベースにする必要があります。そんな慈悲の心といえば、仏教。日本人に馴染みが深く、2500年にわたり人々に救いの手を差し伸べてきた叡智が、SDGsやCSVと親和性が高いということは想像しやすいでしょう。
実際に昨年は築地本願寺にて「仏教×SDGs」をテーマとした次世代リーダーズサミットが行われ、来たる11月10日には、神奈川県の總持寺で同テーマを掲げた大規模なシンポジウムが行われるなど、その親和性を探る動きが活発化しています。
今回はその「仏教×SDGs」シンポジウムの主宰者であり、日本を代表する青年僧組織「全日本仏教青年会」理事長の倉島隆行氏に、仏教とSDGsがどのように交わり、社会を変革していく可能性があるのかについて伺いました。
──SDGsの達成に向けて世界中が動き出した今、人々の気分も以前とは変わってきたと感じます。
SDGsでは、“地球上の誰一人として取り残さない”という未来を誓っています。「取り合うのではなく、与え合おう」という精神は、間違いなく世界的な広がりを見せていると思います。そしてそれは、仏教の根底にある慈悲の精神そのものです。慈悲の精神は、経済発展を優先してきたこれまでの社会では、「綺麗ごとだ」と言われ、なかなか受け入れられませんでした。
しかし昨今、世界各地で未曾有の災害が起こり、経済的な混乱も増えていく中で、先進国を中心に今までの発展・繁栄の経済社会がいつまでも続くわけではない……ということに、多くの人々が気づきはじめました。2015年のSDGs採択は世界のターニングポイントであり、仏教者としてもこの流れを敏感に感じ取っています。
──確かに、災害をきっかけにSDGsのベースにある「世界中で助け合う」という動きが加速しています。
日本は東日本大震災や原発事故の際に、それをリアルに経験しています。世界各国からさまざまな助けやエールを貰い、どれだけ多くの人が勇気づけられたでしょうか。情報を瞬時に世界中でシェアできる世の中になったので、他国で起こった災害が他人ごとではなくなったのも大きいです。
以前はニュースで他国の災害を知っても、自分たちの生活とは乖離した世界の出来事として捉えていましたが、今は、すぐそこで起きている自分ごとのように捉えることができるようになりました。そうして、世界中で生まれる行動や支援が被災地・被災者を救う、本当にありがたい世界になってきています。