実は、この問題はリーダーシップの考え方と密接に関わっている。本記事では、心理学の観点からそれを分析し、正しいリーダーシップについて考えていきたい。
リーダーシップとは、人の仕組みを理解することから始まる。人は何を考え、何を思うのか。そもそも「生きる」というパフォーマンスのメカニズムを知ることが、自他のマネジメントに有効であることは間違いない。
その構造とは、「何を」x「どんな心で」やるかということ。いたってシンプルな2つの因子から構成されている。例外は存在しない。いつでも、どこでも、誰もが「何を」x「どんな心で」の掛け合わせで生きている。
リーダーシップを上手に発揮している人たちは、この構造を理解し、周りのパフォーマンスを引き出すために、周りの人たちと接している。「何を」は何らかのアクションに対する具体的な指示をすること、「どんな心で」はそのアクションの質を高めるために相手のモチベーションをサポートするという二軸で考えられているのだ。
指示の原則は「明確に、具体的に」。脳機能的には認知的に取り組んでいくこととなる。何を、いつ、どこで、誰と、どのようにやるのか。指示が5W1Hにつながり、目標からブレイクダウンされた戦略に繋がるものが正しい指示だ。
指示の権限を有した人が、ただの立場を「偉さ」と勘違いし、心に対する配慮もなく、指示の曖昧さを棚に上げ、自分の指示に従わせようとするのがハラスメントである。
特に、最近話題になることの多いスポーツの場合は、指導者が選手のプレー機会を左右する(メンバーとして起用するか否かなど)ので、ハラスメントがより起こりやすい状況にある。自分は大丈夫だと思う人もいるかも知れないが、これは日頃からよほど意識していないと、意図せずハラスメントが起きてしまう。では、どうすればよいのか。
正しい指示を行うと同時に考えるべきは、相手がそれを「どんな心で」遂行するか。相手の心を配慮して、心を揺らがず・とらわれずの状態に導くことが大切である。指示を出してそのまま放って置くことはリーダーシップではない。その人がどんな気持ちでその指示を聞いているか、何を考えながらアクションをとるかなど、配慮を欠かさないようにしなければいけない。私はその配慮を「支援」とよんでいる。