現在、世界的に毎年800億枚の衣類が生産されている一方、その半数の量の衣類が埋め立て・焼却され廃棄されていると推定されている。問題は環境に対する影響だ。例えば、アクリルやポリエステル素材でつくられる衣類は環境に与える負荷が大きく、洗濯する工程だけとっても、下水処理施設に多大な極細繊維が放出され、最終的に川、湖や海などに流入。環境問題に繋がる恐れがあるとされている。
廃棄となると影響はさらに深刻となる。衣類の効果的かつ新環境的なリサイクルは、国や自治体、また繊維業界や衣料メーカーにとっても大きな課題となっている。
これまで繊維の素材を調べる方法としては、いくばくかのサンプルを燃やして検証する「バーン・テスト」などが代表的で、一部、リサイクル作業者が目や勘に頼って分類するなどのケースもあるという。上述したように廃棄される衣類は大量だが、いずれの手段もすべての衣類の素材を効率的かつ正確に分析することが難しいとされてきた。
そこでSagittoは、近赤外分光器と機械学習を使用し、専用端末を衣類にかざすだけで、素材、および素材の比率を割り出すことができるシステムを考案した。織物は繊維の構成によって、それぞれ固有の近赤外線指紋を持つとされているが、端末および人工知能を使ってそれら特徴を読み解こというものである。
なお人工知能はクラウド上で展開されているため、ユーザー側がデータ専門家を抱えたり、分析のために新たなデータを集めるなどの手間をかける必要がない。衣類にかざすだけというシンプルさが目を惹く。
端末および解析結果の紹介動画では、男性用のYシャツに端末を掲げるとすぐに、「コットン59%、ポリエステル41%」との分析結果が表示された。一方、Yシャツのタグには「コットン60%、ポリエステル40%」との表記されている。その精度もかなりのものである。
社会課題解決とビジネスの双方にメリットをもたらす人工知能のユースケースとして、特筆すべきものになるだろう。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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