さて、試用期間の話に戻りましょう。
この就業規則にも試用期間に関する記載はあるのですが、実は「試用期間を設けなければいけない」という条文は、労働基準法を含めてどの法律にもないそうなんです。
どこを調べても「試用期間とは、新たに雇用した従業員を正式に採用するかどうか、判断するために設ける一定期間のこと」という定義しかなく、さらに3カ月という決まりもない。“判断するために設ける一定期間”は、実にさまざまとのことです。
2014年に独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が実施した調査では、5964の事業所のうち試用期間を設けているところは86.9%という結果。1000人以上の事業所が92.1%と一番高く、100人未満の事業所が85.9%となっています。
また期間に関してもこの調査に記載があり、新卒と中途でそれぞれ記載がありますが、いずれも3カ月程度が約66%と一番多い結果になっていました。6カ月程度は18%、さらに6カ月“以上”となると19%ほどになるそうです。意外と多いですね……。
試用期間よりも、「体験入社」へ
面接だけではわからない適応性を一定の期間でお互いにみましょう、というのが試用期間なのですが、試用期間中であっても、雇用契約上は通常の従業員と同等になります。そのため試用期間で雇用契約を打ち切る場合は、「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」とされています。
つまり、お試し期間というけれど、「やっぱり何か違う」と思った時にお互いに「では、なかったことに」とできるかというと実はそうではありません。
そこで、最近始まっているのが「体験入社」という制度。クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRさんがエンジニア向けに始めたものが話題になりました。
短期コースで1〜2日、長期コースで2週間〜3カ月。短期コースでは現在の会社に勤務しながら他社の仕事も体験してみたい人、長期コースでは働きながらゆっくり時間をかけて転職活動に取り組みたい人(SmartHRも転職先候補の一つ)といった人が対象になっています。
今後はこのような動きが増えてくるのではと思っています。採用面接という形式がすぐになくなるとは思いませんが、副業・兼業の仕組みを使いながら、自分の能力を活かせるところを働きながら探すという人も増えてくるのではないでしょうか。
先ほど紹介した労働政策研究・研修機構の調査でも、試用期間の後に、「本採用しないことがある企業の割合(「本採用しないことがあり、ここ5年間に事例がある」「本採用しないことがあるが、ここ5年間に事例はない」の合計)は、63.1%と半数以上に。多くの時間をかけて選考してこういう結果なのは少し悲しいですよね。
試用期間というのは今までの雇用形態の中では、雇用主・雇用者両方においてお互いにとって必要な期間であったかもしれませんが、今後はこの試用期間という考え方にも変化があるのではないでしょうか。
連載 : 「働き方を選択できる社会」を創るストーリーたち
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