非営利の民間調査機関、全米産業審議会(コンファレンスボード)がエグゼクティブ・サーチ会社ハイドリック&ストラグルズとの提携により作成、先ごろ公表した年次報告書によると、S&P500種株価指数を構成する主要500社(S&P500)のうち、小売業者の最高経営責任者(CEO)の交代率は昨年、前年の16%から23%近くに上昇した。
これは2001年の調査開始以来、最も高い割合だ。また、小売業のCEOの"離職率"は過去の平均が10.5%であることから、昨年はそれと比べて2倍近い割合だったことになる。
報告書はこうした調査結果について、「オンラインショッピングとの競争に必要とされるオムニチャネル化に向けての圧力など、卸売業・小売業はいずれも、現在起きている変化と破壊から最も大きく影響を受けている業界の一つだ」と述べている。
「秩序立った継承」が不可欠
米小売業界で昨年中にCEOの交代を発表した企業には、百貨店のメイシーズのほか、アパレルブランドのラルフローレン、宝飾ブランドのティファニーなどが含まれる。「バービー人形」を販売するマテルもそうした企業の一つだ。昨年、元グーグル幹部のマーゴ・ジョージアディスを新たなトップに招いた。
だが、売上高の減少や子供の遊び方の変化、玩具大手トイザらスの破産などから影響を受けた同社は今春、メディア大手21世紀フォックス関連会社の幹部だったイノン・クレイツを“再び”新たなCEOとして迎えている。
報告書によれば、小売業者のCEO交代のうち、4割近くは「秩序立った事業継承」を実現できなかったことの結果だ。S&P500を業種別に見た場合でも、小売業でのトップ交代率は最も高くなっている。
社外からの「ハンティング」に期待
そのほか報告書は、消費者市場における“破壊的な競争や変化”など数多くの難問に直面する小売業にとどまらず、新たな視点を取り入れることを目的として異業種のトップを新CEOに招くケースはその他の業界でも見られると指摘している。
S&P500で昨年中にCEOを交代させた各社のうち、新たなリーダーが社外や異業種から招かれた割合は、44%となった。それ以前の2年の調査結果と比べ、3倍以上に増えている。
例えば、ファストフードのチポトレ・メキシカン・グリルは創業者のスティーブ・エルスに代わる新CEOとして、グループ企業以外のトップを招いた。同業のヤム・ブランズが運営するファストフードチェーン、タコベルの成長をけん引したブライアン・ニコルが、新たなCEOとなっている。
小売業界が直面する破壊のペースが、緩む兆候は見られない。同業界において企業トップが通る“回転ドア”の回るスピードは、今後も速まるばかりかもしれない。