デジタルマーケティングでの「cookie」の価値は消滅したのか?

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各種ブラウザーで使われる「クッキー(cookie)」は今、デジタルマーケティングの遺物の山に投げ捨てられようとしているのだろうか? クッキーの役割や有用性は、デジタルIDやモバイルIDによって変わってしまったのか?

「既にある程度、起きていることだ」。ネバダ大学リノ校のデービッド・クロウズデル教授(起業学)はこう語る。

「モバイルIDを使用すれば、クラウド上でのデータ保存の促進を通じて消費者行動をより大規模な形で活用できる。はるかに多くのデータを保存・処理できるのだ」

「クラウド上にデータを保存することで、リアルタイム位置情報に基づいたサービスや、サービスとしての分析(AaaS)を使ったビジネスインテリジェンス向けに、よりダイナミックなデータトラッキングが実現できる」

しかし、今すぐクッキーに死亡宣告が下る訳ではないようだ。

「インターネットやWWWの技術的構造を考えれば、クッキーは今後も必要とされるだろう」。こう語るのは、デジタル・アナリティクス・アソシエーションの共同創設者、ジム・スターンだ。

「ステートフルな状態を作るクッキーのおかげで、一度選択されたものをクリック後やページ変遷後も記憶できる。クッキーがなければ、買い物かごシステムは実現できない」

クロスデバイストラッキング問題への対処

クロスデバイストラッキングに関しては、ある水と油の関係によって、クッキーに注目が集まっている。

「この水と油の関係は、クッキーとモバイル端末の間でなく、端末同士の間に存在する」と、R2iの上級デジタルマーケティングアナリスト、アンドレア・ゴールドスタインは言う。「クロスデバイストラッキングはもともと、該当のサイトやアプリがユーザーに各デバイスでのサインインを要求する場合にのみ回避可能だった」

「業界ではその後、匿名のユニークIDを作成して各ユーザーへ割り当てるようになった。しかし、このプロセスは100%正確ではなかった。このIDは、ユーザーにまつわる複数の情報と、適切なIDを割り振るアルゴリズムに基づいて割り当てられている」

「このプロセスに基づくと、クロスデバイストラッキングの水と油の関係は、モバイル端末上のクッキーの問題ではなく、正確性とスケーラビリティー(拡張性)とのバランスを巡るものに広がる可能性がある」
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編集=遠藤宗生

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